1999年 12月号抄録

prev10s.gif



特集「情報とデザイン」の編集にあたって

   Webを通じて誰もが簡単に情報発信できるようになった現在,「情報」と「デザイン」は切り離せないものとなりました。Webでの情報発信は=(イコール)Webデザインであり,かつて専門家の仕事であった「情報」の「デザイン」が,デザインの素人である情報担当者にも必要な時代になってきました。   このような状況において,情報担当者にとって必要な「デザイン」の知識とはどういったものでしょうか?どのようにWebサイトやOPACを構築したらよいのでしょうか?   また,一歩進んで「情報」と「デザイン」の関係の中で,情報担当者が果たすべき役割は何なのでしょうか? 本特集には,情報デザインの実際とWebデザインガイドライン,実際のWebサイトの構築とマネジメント,大学図書館のホームページとOPACのインタフェース,現在のパーソナルコンピュータに不可欠なGUIといった様々な観点からの論文をいただきました。   これらの論文をお読み頂いて,情報担当者を取り巻く「情報」と「デザイン」の現在・未来が浮き彫りになれば幸いです。    
 (担当編集委員 大原寿人,重田有美,棚橋佳子,友田暁子,豊田恭子,長谷川正好)

特集:情報とデザイン 情報とデザイン ―情報デザインの実際と Webデザインガイドライン―

篠原稔和 (しのはら としかず)  情報デザインコンサルタント
 「情報」と「デザイン」を総合的に捉える新しい分野である「情報デザイン」が注目を集めている。本稿では,情報デザインの概要を捉えると共に,今まさに情報デザインが求められている分野について解説する。また,情報デザインの具体的な適用例として,Webサイトのデザイン/構築における「情報アーキテクチャ」,「Webサイトエンジニアリング」,「ユーザビリティ」といった実践手法と,情報デザインをWebデザインに展開する上で指針となる「Webデザインガイドライン」を紹介する。最後に,情報デザインに必要なスキルを考察するとともに,情報関係者の果たす新しい役割について論じる。   
キーワード:情報デザイン,情報の組織化,オブジェクト分析/設計,ドキュメント分析,ナレッジマネジメント,情報アーキテクチャ,Webサイトエンジニアリング,ユーザビリティ,デザインガイドライン,アクセシビリティ

特集:情報とデザイン  大学図書館のホームページとOPACを採点する

上田修一 (うえだ しゅういち) 慶應義塾大学文学部
日本の大学図書館の2/3がホームページを持ち,4割の図書館はWWW版のOPACを公開している。大学図書館のホームページは,電子化情報サービスへの入口としての役割がより重くなりつつある。一方,OPACは広く利用されているものの,商用図書館用パッケージソフトウェアの一部として提供されているOPACは,余計な機能が多く,目録の利用者の行動を反映しておらず,使いにくいものとなっている。細かな点まで具体例をあげて問題を指摘した。  
キーワード:大学図書館,OPAC,ホームページ,データベース,目録  

特集:情報とデザイン  大学図書館におけるWebサイト構築とマネジメントの実際

金子康樹 (かねこ やすき) 慶應義塾大学三田メディアセンター  
大学図書館における Web サイトの構築・維持・管理方法について述べる。図書館にとってのインターネットは,重要な情報源である。膨大なインターネット情報の中から,信頼性が高く,価値のある情報を選び出すための支援を行うことは,図書館の重要な役割の一つと考えられる。図書館独自の Web サイトは,こうした価値ある情報にアクセスするためのインターフェースとなるばかりでなく,図書館の利用方法や,図書館活動を広く知らしめる情報発信のための有効なツールとなりうる。図書館が Webサイトを維持・管理していく上での作業方法について,図書館員自身による協同作業と,専門業者に依頼しての構築について考察する。  
キーワード:大学図書館,Web サイト,インターネット,協同作業,図書館広報,ユーザーインターフェース   

特集:情報とデザイン GUIの起源と進化の概略

大谷和利 (おおたに かずとし) テクノロジーライター・米国在住 
*   コンピュータが単なるコンピュータからビジネスのツールや情報メディアへと進化する過程において,操作性や使い勝手の改善がその機能性以上に重要なポイントとなった。Xeroxはコンピュータの画面を日常的に存在する事物の「メタファ(隠喩)」で置き換えることでこの問題を解決しようとし,仮想的なデスクトップの上に配された書類やフォルダをマウスで操作するGUI(Graphical User Interface)の基本概念を案出する。後にGUIは,Apple社のMac OSによって細部にいたるまで洗練される形で完成され,その後を追ったMicrosoftのWindowsによって大衆化された。今後のインターフェース技術の進化の中でも,GUIは重要な要素として存続するだろう。  
キーワード: GUI,グラフィカル・ユーザー・インターフェース,ゼロックス,アップル・コンピュータ,マッキントッシュ,マックOS,マイクロソフト,ウィンドウズ,マウス,ビットマップディスプレイ,メタファ,デスクトップ,アイコン    

連載:統計の読み方(第7回) 財政編

河野 江津子 (こうの えつこ) 慶應義塾大学湘南藤沢メディアセンター
わが国の財政赤字は,なかなか回復軌道に乗らない経済情勢の中,危機的なレベルに達している。   しかし,複雑な日本の財政構造や予算制度のため,その現状を理解し,自らの生活にも深く関わる問題として認識するのは難しい状況である。   そこで今回は,わが国の財政,特に予算制度のしくみについて解説するとともに,関連のデータが得られる資料を紹介する。また,主要な指標から現在の財政状況について確認し,財政問題についての理解を深めることを目的とする。     
キーワード:財政赤字,財政構造改革,予算制度,財政投融資,国民負担率,公債依存度

    prev10s.gif