Vol. 59 (2009), No.10
企画書を書く,意思決定者に対してプレゼンテーションをする,予算を獲得する・・・少し前まではわたしたちインフォプロにはあまり縁のなかった(とされていた)「企画・立案」は,現在身近なものになっているのではないでしょうか?
とはいえ,本特集の総論にて稲葉氏が書かれているように,"急に「企画を立てなさい,予算を獲得しなさい,図書館の活性はあなたの腕次第」と言われても,そのような教育や指導は受けていない"と言いたくなるし,悩みに悩んで企画を考えてもわれながら面白くなかったり,利用者が集まらなかったり・・・という悩みを抱えておられる方もたくさんいらっしゃると思います。
本特集では,広報・企画担当の専任者ではないインフォプロ(図書館員)が,企画・予算獲得にどのように関われるか・関わるべきかということを,大阪大学の稲葉洋子氏にご自身の経験を踏まえ,述べていただきました。次に,利用者調査の結果の分析・活用にマーケティングの視点を取り入れている慶應義塾大学の事例を上岡真紀子氏にご紹介いただき,アイディアを広げてまとめるツール「マインドマップ」および「ブレインストーミング」について,チェンジビジョンの平鍋健児氏にご紹介いただきました。また,北海道医療大学の平紀子氏・平博彦氏と人と情報を結ぶWEプロデュースの尼川洋子氏には,企画・運営の実際についてご報告いただきました。
本特集が,企画・立案に悩めるインフォプロのお役に立てれば幸いです。
(会誌編集担当委員:服部綾乃(主査),野田英明,權田真幸,広瀬容子)
稲葉 洋子*
*いなば ようこ 大阪大学附属図書館
〒560-0043 大阪府豊中市待兼山町1-4
Tel.06-6850-5060(原稿受領 2008.7.23)
近年,国立大学図書館では所属する大学の理念や目標・計画のもと,図書館も一部局として成果を上げ,かつ利用者への多様なサービス活動を展開していくことが求められている。だが,運営に関わる予算が厳しくなってきている現在では,図書館職員一人ひとりが企画をし,予算を獲得する能力が必要とされてきている。本稿では,国立大学法人化以降,国立大学図書館職員が置かれている状況と,その中でどのように自らスキルアップをして能力を高めていけばよいのか,現場から提案していく。
キーワード: ライブラリーマネジメント,大学図書館,企画,予算,スキルアップ,広報,外部資金
上岡 真紀子*
*うえおか まきこ 慶應義塾大学理工学メディアセンター
〒223-8522 横浜市港北区日吉3-14-1
Tel. 045-566-1475(原稿受領 209.07.28)
図書館においても利用者調査を実施することが増えている。こうした利用者調査の結果を分析・活用する際にマーケティングの考え方が参考になる。本稿では,まず利用者調査の手法の中からいくつかの手法を取り上げ,結果を分析・活用する際に有効なマーケティングの概念やツールを参考にポイントをまとめる。続いて,これらの調査データが,図書館経営や新しいサービス開発,あるいは既存のサービス改善にどのように寄与することが可能なのかについて,慶應義塾大学理工学メディアセンターにおける個人用学習スペース設置の事例を紹介する。
キーワード: 利用者調査,マーケティング,サービス開発,サービス改善,LibQUAL,フォーカス・グループ・インタビュー,サービス品質調査,慶應義塾大学,評価
平鍋 健児*
*ひらなべ けんじ 潟`ェンジビジョン
〒110-0005 東京都台東区上野2-7-7
Tel.03-3835-4062(原稿受領 2009.7.21)
絵と文字を使って発想を大胆に描いていくマインドマップ。この手法をビジネスや教育,システム開発の現場でどのように利用していくかを,実例を用いて解説する。マインドマップの特徴である「ひろげる」発想術と「まとめる」整理術を使って,自己紹介,議事録,ブレインストーミング,システム開発での例を示しながら,その具体的な手法と利点をまとめる。
キーワード: マインドマップ,ブレインストーミング,整理術,発想法
平 紀子*1,平 博彦*2
*1たいら のりこ 北海道医療大学総合図書館
*2たいら ひろひこ 北海道医療大学歯学部
〒061-0293 北海道石狩郡当別町金沢1757
Tel. 0133-23-1140(原稿受領 2009.8.6)
北海道医療大学図書館が企画した「地域格差のない医療情報提供のための薬剤師・看護師教育プログラム」が,文部科学省の2008(平成20)年度「社会人の学び直しニーズ対応教育推進プログラム」に選定された。事業のコア・コンセプトは地域医療の活性化であり,臨床現場の薬剤師や看護師が住民に正確な医療情報を提供する上で必要とする@情報収集のための知識・技術,A入手情報の質の評価,B最新の情報に基づく患者教育を身につけること,そして北海道における医療情報格差を解消しようとするものである。本事業プログラムの企画は,筆者が2004年から2007年にわたり行った基盤研究がベースになっている。ここでは,企画のベースである地域医療従事者を対象に行った情報ニーズ調査の結果を踏まえ,本プログラム企画に至った背景と共に現状について述べる。
キーワード: 大学,医学図書館,薬剤師,看護師,専門職教育プログラム,地域連携
尼川 洋子*
*あまかわ ようこ 人と情報を結ぶWEプロデュース
〒657-0835 神戸市灘区灘北通10丁目1-21-303
Tel.078-805-5221(原稿受領 2009.07.28)
ライブラリーの活性化をはかるために,一人ひとりのライブラリアンがマネジメントの視点とスキル,ノウハウを身につけることをめざして,2004年から 5回の少人数ゼミナール形式の「ライブラリーマネジメント・ゼミナール」を企画・実施した。そのプログラムの概要とゼミナールの企画,運営の実際,得られた成果について報告する。
キーワード: ライブラリーマネジメント 研修プログラム 現職教育 ゼミナール ワークショップ プログラム運営