Vol. 55 (2005), No.7
特集=図書館の発信情報は効果的に伝わっているか?


特集「図書館の発信情報は効果的に伝わっているか?」の 編集にあたって

 図書館が持つ資源や提供するサービスを有効活用していただくためには,まず,その存在を「知っていただく」ことが必要です。また,図書館を知っていただくことは直接的利用者だけではなく,図書館の上部組織管理者に対しても必要でしょう。直接的利潤をあげない図書館・情報部門は,ともすると短絡的に経費削減の対象とみなされがちです。しかし,少子化に伴い競争の激しさを増す大学においては学習・研究環境の質が,企業や研究所においては提供サービスや新規開発の下地となる情報環境の質が問われるでしょう。
 今回の特集では「図書館広報」に焦点を当て,広報活動の目的や意義を再確認する総説とともに,規模の異なる館種から事例をご紹介いただきました。
 本特集が、みなさまの広報活動のご参考になれば幸いです。
(編集担当委員:及川はるみ,上村順一,大田原章雄,北島由紀子,野本 東)

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総論:図書館における広報
田中 均*
*たなか ひとし 昭和女子大学短期大学部人間文化学科
 〒154-8533 東京都世田谷区太子堂1-7
 Tel. 03-3411-5442(原稿受領 2005.5.18)

 図書館の理想や実態は,利用者に正確に伝わっているとは言えない。図書館の存在やサービス,社会的意義は何故理解されないのであろうか。
 これからの図書館広報のあり方を考察するために,図書館における広報活動とPR活動の意義・必要性,方法論を整理し,現代的課題として情報化社会における利用者の意識の変化,公聴活動の重要性,広報内容の充実と注意点,パソコン利用,ウェブコンテンツJISを取り上げる。加えて改革の進む動物園から旭山動物園の事例を分析して,堅実な理念に基づいた理想的な図書館の実現へ向けた図書館職員一丸となった努力が重要であることを明らかにする。

キーワード:図書館,広報活動,PR活動,公聴活動,ウェブコンテンツJIS,動物園

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新たなパラダイムでの図書館広報とマーケティング
藤江俊彦*
*ふじえ としひこ 千葉商科大学政策情報学部/大学院政策情報学研究科 教授
 〒272-8512 千葉県市川市国府台1-3-1
 Tel. 047-373-9919(原稿受領 2005.4.26)

 ポストモダンの時代に入り,需要者主導の時代が来た。図書館は利用者の視点で閉ざされた教育研究の場から,学習など多様な楽しみ体験の開かれた場へとコンセプトを転換し,ソーシャルマーケティングを展開すべきだ。そのためには利用者とのコミュニケーションサービスが不可欠で,ハイブリッドなメディアを活用した戦略的広報活動やマーケティングが必要である。

キーワード:
パブリックリレーションズ,利用者主導,ポストモダン,広報,
        ソーシャルマーケティング,リレーションシップ,ハイブリッド(混成型)メディア,
        ウエッブサイト,図書館,デジタルアーカイブ,コミュニケーション 
 

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図書館広報戦略構築の取組み
作野 誠*
*さくの まこと 愛知学院大学歯学・薬学図書館情報センター
 〒464-8650 名古屋市千種区楠元町1-100
 Tel. 052-751-2561(原稿受領 2005.4.25)
 
効果的効率的な図書館サービスを創出するためには,組織としての図書館を革新していくための経営戦略が重要である。しかし,それと同時に,提供する図書館サービスを利用者に知らせるための広報戦略構築に関する仕組み作りが必要である。
 本稿では,図書館サービスの認知状況と満足状況に関する来館者調査の結果に基づいて,広報活動の重要性を考察し,マーケティング的な視点から広報戦略構築に関する仕組み作りについて検討した。

キーワード:図書館経営戦略,来館者調査,図書館サービスの認知状況,
        図書館サービスの満足状況,図書館マーケティング,図書館広報戦略
 

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病院図書室の広報活動
―アンケート調査を実施して―
天野いづみ*
*あまの いづみ 静岡赤十字病院図書室
 〒420-0853 静岡県静岡市葵区追手町8-2
 Tel. 054-254-4311(原稿受領 2005.4.18)
 
 図書室の広報手段は,紙媒体による方法から,ホームページやイントラネット,電子メール等の電子媒体を利用する方法に移行しつつある。しかし,院内アンケート調査によると,従来の紙媒体での「図書室だより」は,手軽に手に取ることができるため,電子媒体よりも目に触れる機会が多いことが判明した。しかしながら,OPACの検索や電子ジャーナルへのリンク等,電子媒体の必要性は年々高まっていることは事実であり,他病院への広報アンケート調査でも,ホームページやイントラネット利用の増加の現状が明らかとなった。さらに今回,広報のひとつとして,利用者に対するオリエンテーションについても検討した。

キーワード:広報,病院図書館,Local Area Network,図書館サービス,
        図書館テクニカルサービス,利用者教育,情報提供,イントラネット 

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広報としての図書館展示の意義と効果的な実践方法
米澤 誠*
*よねざわ まこと 東北大学附属図書館工学分館
 〒980-8576 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-03
 Tel. 022-795-5892(原稿受領 2005.4.18)

 図書館で行う展示会は,図書館資料の利用を促進する活動の一環であり,図書館の存在を社会に示す広報活動としても意義づけ,図書館展示の持つ積極的意義を見直す。また,東北大学で実施した「企画展」を事例として,展示・解説の効果的実践方法を示す。

キーワード:図書館展示,広報,人材育成

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学術情報リテラシー教育における広報イメージ戦略
 ―司書職の専門性をどう訴求するか―
仁上幸治*
*にかみ こうじ 早稲田大学図書館
 〒359-1192 埼玉県所沢市三ヶ島2-579-15 早稲田大学所沢図書館
 Tel. 04-2947-6705(原稿受領 2005.5.23)

 大学における学術情報リテラシー教育に図書館員が参画する機会が増えている。司書職の専門性が崩壊の危機に瀕する状況にあって,専門性の社会的認知を回復し向上させるためには,パブリック・リレーションズとマーケティングの視点が必要不可欠となっている。本稿は,図書館員の社会的イメージの問題点を整理し,新しい学術的専門職像の訴求をめざす広報イメージ戦略の基本的な考え方と取り組みのアイディアを例示する。

キーワード:図書館,図書館員,司書,専門性,情報リテラシー教育,指導サービス,
        広報,PR戦略,イメージ
 

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