Vol. 55 (2005), No.2
特集=情報ポータル


特集「情報ポータル」の編集にあたって

  WWWにおいて「ポータル」という言葉は当初,大手検索エンジンやディレクトリなど「インターネットの入り口」としての機能を強化したサイトを指して使われていました。その後,サブジェクトポータル,もしくはボータル(Vertical Portalの略)のように主題や産業別に特化したもの,メールやチャットなどのオンラインツールやショッピング,オークションなど多くの機能を付加したポータルサイトが多く発展してきています。また昨今,学術情報の世界では,複数のオンラインデータベースやアーカイブ等を統合したWebインターフェースとそのリソース群を総称して,「学術ポータル」と呼ぶ例が見られます。
 これらのポータルサイトは,ポータルという語に対して,またポータルと称して,提供しているサービスについて,おそらくはそれぞれ微妙に異なった考え方を持っているのではないか,と考えています。
 本特集では,こうした情報源とツール,インターフェース,多彩な機能を統合的に提供する「ポータル」という概念を再確認し,その最新動向について概観します。広く「ポータル」とするとまとめ方が難しいため,学術情報ポータル,特許情報ポータル,地域情報ポータルという3つの例に具体化して総論・事例を紹介し,それらの事例の中からポータルという言葉が持つ概念を浮かび上がらせていければと考えております。
(編集担当委員:高島有治,大田原章雄,川瀬直人,吉間仁子)

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特集:情報ポータル
図書館ポータルの本質:多様なコンテンツを生かす利用者志向サービス
米澤 誠
よねざわ まこと 東北大学附属図書館総務課
 〒980-8576 宮城県仙台市青葉区川内27-1
 Tel. 022-217-5925(原稿受領 2004.11.22)
 
 図書館ポータルの本質的性格を明らかにするために,学術情報発信ポータルとの違いやホームページとの違いを考察する。そして,ポータルの重要な要素であるインテグレーション機能とパーソナライズ機能に着目しつつ,ウェブ時代における図書館の多様なコンテンツを生かす,利用者志向のサービスがポータルであることを提示する。

キーワード:図書館ポータル,電子図書館,デジタル・コンテンツ,MyLibrary,統合検索システム

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特集:情報ポータル
三重大学附属図書館のポータルデスク
木下 聡
きのした さとる 三重大学附属図書館
 〒514-8507 三重県津市上浜町1515
 Tel. 059-231-9089(原稿受領 2004.11.4)

 大学改革の流れのなかで,大学はその存在意義を社会に対してアピールする必要から,ホームページによる広報活動を充実させている。大学図書館でもその一翼を担うように,サービスや学術情報コンテンツを,インターネットを通じて大学の内外に広く公開するようになってきた。そのような活動の一例として,三重大学附属図書館でのポータルサイト構築の試みを紹介する。図書館のホームページにおける3つのポータルデスク(学生ポータルデスク,教官ポータルデスク,地域貢献ポータル)について,基本的な考え方や構成を解説するとともに,今後の課題についても考察する。

キーワード:大学図書館,情報リテラシー教育支援,ポータルサイト,サービス戦略,地域貢献

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特集:情報ポータル
シンガポールの知的財産ポータルSurfIP
平間靖英
ひらま やすひで 劾TTデータ経営研究所
 〒150-0014 東京都渋谷区東1-32-12
 Tel. 03-5467-6321(原稿受領 2004.11.24)

 シンガポールでは,知識経済への移行を促進する社会インフラとして,知的財産庁が「ワンストップ・ファーストストップ知的財産ポータル」と称するSurIPを運用している。SurIPは,単なる情報ポータルにとどまらず,サービスポータルとして,知的財産のライフサイクルに従った総合サービスを提供している。本論文では,SurIPについて具体的な分析を行い,課題と展望をまとめた。

キーワード:シンガポール知的財産庁,SCOPE IP,SurfIP,知識経済,知的財産立国,知的財産経営,知的財産権市場

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特集:情報ポータル
PIUG (Patent Information Users Group, Inc.) の活動
石井 浩

 特許情報に関する国際的な団体であるPIUGは,特許情報に関心のある個人のための非営利法人である。特許や関連技術文献の量が年々増加するのに伴い,特許情報を効率的に検索・解析することはビジネスにおいても必要なスキルとなっている。PIUGの使命は特許情報調査・解析システムの発展を推進することにより,会員の特許情報調査・解析スキルをさらに磨くことであり,またこの分野に卓越したメンバーに対して適切な評価を行うことである。この国際的なフォーラムおよびディスカッションを通じてPIUGは特許情報の検索,解析,普及を推進ならびに改善する。

キーワード:特許情報,ユーザグループ,知識ベース,ディスカッションリスト,メーリングリスト,PIUG

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特集:情報ポータル
地域ポータルサイトについて
田村信之
*1たむら のぶゆき 特定非営利活動法人地域ポータルサイト推進協会
 〒181-0013 東京都三鷹市下連雀3-32-3三鷹産業プラザアネックス (株)早稲田総研 三鷹オフィス内
 Tel. 0422-40-1133(原稿受領 2004.11.24)

 インターネットの普及により地域の多様な情報が,多くの人々に迅速に届けられるようになった。地域内の公共・民間のサービス事業者や住民などの地域の構成員が,情報の受発信者となってオープンな情報交流を積極的に行うことが,地域社会に共通する問題解決の一助となり,住民の生活の質の向上や地域経済の活性化をもたらすという認識に立って各地で地域ポータルサイトの構築への取り組みが行われている。
本稿では,各地での地域ポータルサイトの構築・運営の支援を通じて得られた成果を踏まえ,構築・運営に関するポイントと課題について述べる。

キーワード:地域ポータルサイト,地域活性化,コミュニティビジネス,商店会,地方自治体

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特集:情報ポータル
つくばポータルサイト
西沢 明*1,高橋秀知*2
*1にしざわ あきら 国土交通省
 〒100-8918 東京都千代田区霞ヶ関2-1-3
 Tel. 03−5253−8401
*2たかはし ひでちか 筑波研究学園教授
 〒300-0811 茨城県土浦市上高津1601
 Tel. 029−822−2452(原稿受領 2004.11.18)

 つくばポータルサイトは,つくばに関する情報を容易に得られるよう,つくばに関する情報を発信しているサイトを整理・分類しているウェブサイトである。つくばポータルサイトの構築にあたっては,アンケート調査や対話集会により広く市民の意見を聴取することに努めた。また,市民の交流を促進するための掲示板や分野別の解説付リンク集などの特徴的なコンテンツを提供している。つくばポータルサイトは一定の機能を果たしているが,今後は,研究学園都市としての一元的な情報発信が求められており,地元自治体や研究交流の拠点機関との連携・協力が求められている。

キーワード:地域ポータルサイト,筑波研究学園都市,研究開発情報,生活情報,住民意見の収集

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第1回情報プロフェッショナルシンポジウム ラウンドミーティング (これからの日本の学術雑誌)
日本の学術雑誌を世界に普及させる必要性とその方法
殿崎 正明* 
とのさき まさあき 日本医科大学中央図書館
 〒113-8602 東京都文京区千駄木1-1-5
 Tel. 03-5814-6949(原稿受領 2004.12.28)

 外国雑誌の価格高騰状況を主要な出版社別に紹介しながら,電子ジャーナルの普及と共に従来の学術情報コミュニケーションのあり方に変革が求められつつある点と同時に,日本が科学技術情報立国,知的財産立国を標榜するならば,トップランナーとなるべく「Science」「Nature」を凌ぐ日本発の一流の学術雑誌を発行して行くべき時期が来ていること,日本の学術雑誌を世界に普及させる必要性について指摘する。それを育成する方法として先ず,研究者の意識改革,日本の雑誌に発表した論文をお互いに評価し合う,研究助成金による報告書・研究成果は必ず日本の雑誌に投稿することを義務付ける,等の具体的な戦略について述べる。

キーワード:電子ジャーナル,学術雑誌,雑誌価格,学術情報コミュニケーション

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第1回情報プロフェッショナルシンポジウム ラウンドミーティング(これからの日本の学術雑誌)
国内学術雑誌と著作権 ―課題満載の著作権処理―
松下 茂
まつした しげる 潟Tンメディア
 東京都中野区本町3-10-3
 Tel. 03-5371-8541(原稿受領 2005.1.12)

 国内での学術雑誌の著作権処理は,完全には機能していない。主な原因は,1)学術雑誌の著作権処理機関が複数に分かれていること,2)各管理著作物が網羅性を欠くこと,3)利用者の意見が十分に反映されていないこと,などが挙げられる。また,国内の学術出版者では著作者と出版者の関係が曖昧なままになっている場合が多い。それは,主に出版者自身の著作権への理解が乏しいことにある。この解決がなされなければ,本格的な電子ジャーナルの登場も期待しにくい。本発表では,このような現状を紹介し,そこからどのようにすれば円滑な著作権処理や新しいビジネストレンドが可能であるかを提起する。

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連載:INFOPROのBOOKMARK(第11回)
 特許の法的状況を調べる
小川裕子
 おがわ ゆうこ オルガノ梶@法務特許部
  〒136-8631 東京都江東区新砂1-2-8
  Tel. 03-5635-5122(原稿受領 2004.11.24)
  日本,米国,欧州,アジアについて特許の法的状況を調査するためのデータベースおよび関連情報について述べる。

 キーワード:日本特許庁 米国特許庁 欧州特許庁 中国特許庁,韓国特許庁,台湾特許庁,特許情報データベース,法的状況 情報の共有化

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