情報の科学と技術
Vol. 55 (2005), No.1
特集=中国のいま
2005年 年の始めに
社団法人 情報科学技術協会 会長 立花 肇
2005年のスタートに当たり,一言ご挨拶を申し上げます。
昨年からようやく景気が上向いて参りましたが,今年は大きく好転することを願っております。種々の業種において活発な経済活動が行われることで,私達情報関係者にとってもビジネスが活発化し,新しいビジネスチャンスが創製されることでしょう。情報が政治,経済,科学,工業などにとって必須になればなるほど,情報専門家の腕の見せ所が増えてきます。エンドユーザが増えれば増えるほど,情報専門家の活躍の場が広くなることでしょう。今年も会員はじめ関係者の皆様の大いなる活躍を期待します。
昨年は独立行政法人科学技術振興機構(JST)と共催でINFOPRO2004を実施したところ,各方面に大変好評でたくさんの参加者を迎えることができました。今年も内容を一層充実して同様に開催したいと考えています。
2003年から装いを新たにした検索能力の認定試験も受験者が増加しており,この試験に関わるセミナーや参考書の出版も順調に伸びております。これらはひとえに皆様のご支援と関係者の努力によるものであり,深く感謝いたします。
当協会の会誌は今年の1月号から,見やすい体裁に改正いたしました。会誌を通じて,今後より一層の会員間の交流が深まることを期待します。昨年はシンポジウム,セミナー,認定試験,会誌などを通じて,多くの新入会員を迎えることができました。今年も当協会の活発な活動を通して,多くの会員をお迎えし,より活発な協会となるよう努力する所存です。
皆様の各方面でのますますのご活躍とご健勝を祈念いたします。
特集「中国のいま」の編集にあたって
日本と中国―隣国でありながら中国関連の情報を入手する手段は意外と知られていないのではないでしょうか?最近では,企業進出,研究交流,文化交流など中国との情報交流が盛んになっています。また,中国のインターネット人口が急速に増え,今後5年間で世界1位に躍進するのではないかとも言われています。
このような情報環境の変化により,インターネットを利用した中国に関する情報ニーズや中国自身の内外への情報発信も増えていると思います。今回の特集では,まず情報発信の根幹となる中国の情報化と社会変化について総括的に概観をしていただき,中国のインターネット事情や日本においても再三議論されている知的財産権事情ついて解説をしていただきました。そして,中国の学術情報を提供するデータベース,様々な情報ニーズに対応する情報サイトについて紹介をしていただきました。中国の情報社会,情報環境を知るきっかけにしていただけると幸いです。
(会誌編集担当委員:深澤剛靖, 北島由紀子, 及川はるみ, 野本 東)
中国の情報化の進展と社会変化
瀧口樹良
*たきぐち きよし 兜x士通総研 経済研究所
〒105-0022 東京都港区海岸1-16-1 ニューピア竹芝サウスタワー11F
Tel. 03-5401-8396(原稿受領 2004.11.12)
経済成長が著しい中国経済を牽引するといわれるのがIT産業である。特に2001年11月のWTOへの正式加盟により情報通信分野における規制緩和と競争導入がさらに進むことが期待されている。これにより,中国は「世界の工場」と同時に「世界の市場」としても世界経済において重要な役割を担うことが期待されている。
中国のマクロ経済の躍進,世界経済におけるパフォーマンスの増大についての報告は枚挙に暇がないが,経済成長に伴う社会変化についての研究はまだ少ない。特に情報化に伴う社会変化について論じたものは稀である。本報告では,中国における情報化の進展動向を統計データから確認し,今後の社会変化がもたらす課題について言及したい。
キーワード:中国,情報化,インターネット,社会変化,規制
中国のインターネット事情
―現状と課題―
二階堂 善 弘
*にかいどう よしひろ 関西大学文学部
〒564-8680 大阪府吹田市山手町3-3-35
Tel. 06-368-0475(原稿受領 2004.10.26)
中国におけるインターネットの現状について簡略に説明し,ポータルサイトや文字コード問題の推移についてふれた。そして問題と今後の課題について若干の意見を述べた。
キーワード:中国,インターネット,ポータルサイト,文字コード
中国における知的財産事情の最新動向
―ITとの関わりを踏まえて―
張 輝
*ちょう き 葛Z術経営創研代表取締役社長,立教大学大学院ビジネスデザイン研究科MBAコース兼任講師,日中テクノビジネスフォーラム代表,法学博士
〒100-0005 東京都千代田区丸の内1-3-1
東京銀行協会ビル15階
Tel. 03-3216-7365(原稿受領 2004.11.1)
WTO加盟後3年を経過した現在においても,中国国内での知的財産保護の実態などについて,日本では立体的に把握されていない状況にあるように思われる。しかし,日中間のビジネスがますます密接になっていく中では,中国における知的財産事情の最新動向を客観的かつ比較的に捉えていくのが不可欠である。本稿では,中国における知的財産権保護の実態や制度の特徴などを俯瞰的に見た後,中国の知財戦略の台頭とIT化の一角について解説するとともに,中国初の上海知的財産パークの構想を紹介し,日本関係者への簡単な助言を行う。
キーワード:知財紛争,条例,知財戦略,産学研連携,上海知財パーク,意識の変革,ビジネスモデル
中国における「知識のインフラ」整備事業
―清華大学主管の学術情報データベースの概要―
川崎道雄
全世界的に学術雑誌の電子ジャーナル化が進むなか,中国では,その量の膨大さにおいて世界に類例を見ない雑誌,新聞,学位・学会論文の総合的データベースであるCNKI(China National Knowledge Infrastructure)の構築が国家事業として立ち上がり,中国国内では順調な運営が続いている。2000年からは海外での利用も可能となり,中国との経済・文化の交流が深化する日本でも,中国の情報を得るためのツールとしてCNKIは無視できない存在となっている。本稿では,その概要を紹介する。
キーワード:データベース,中国の新聞雑誌,電子ジャーナル,中国の情報収集,CNKI
中国情報を取り扱うトップブランドへ
佐藤詠秒
*さとう えいみ 潟Tーチナ 広報部
〒103-0027 東京都中央区日本橋1-3-11 浅野ビル7F
Tel. 03-3548-9155(原稿受領 2004.10.23)
潟Tーチナは,1人の中国人留学生が日中間のより深い相互理解を実現したいという初心のもとに,1999年に設立されたベンチャー企業である。現在は,日本における最大の専門ポータル「中国情報局」を始め,証券会社向けに中国株価情報をASPで提供するサービスや独自の手法で中国市場に対応したマーケティングリサーチ事業で注目を集めている。
キーワード:中国の情報財,中国株,情報の体系化,中国マーケティングリサーチ