情報の科学と技術
Vol. 53 (2003) ,No.5
特集=設計と組み立て
特集「設計と組み立て」の編集にあたって
設計と組み立てという言葉から何を連想されるでしょうか?
工作の時間にやった本棚の組み立て? 住宅の新築? あるいは,コンピュータプログラムの作成?
いずれにせよ,何か新しい試みを起そうと思ったとき,ただ,闇雲に走るのではなく,そこには,「明確な目標を設定し」「現状を分析し」「遂行のため作戦を練り」「コスト計算をし」「材料や人員を集め,折衝をし」「スケジュール管理をし」等といった共通な要素があり,それらの要素をうまく調和させ,目標に向って遂行していくことが必要です。
我々は,図書館や情報センターでの様々な企画やプロジェクトを「設計と組み立て」として考えました。
どんなにすぐれた企画であっても実現できなければ絵に描いた餅です。
この号では,プロジェクト遂行に必要な基本的な考え方やスキルを学ぶとともに,情報部門での大小様々なプロジェクトを実行された先人の知恵を学びたいと思います。
読後に,元気が出て,その気になっていただければ幸いです。
(会誌編集委員会特集担当委員:茂出木理子,上村順一,北島由紀子,松林正己)
プロジェクトマネジメントとは
―情報システム利用者にとってのプロジェクトマネジメント―
藤田芳夫*
*ふじた よしお 鞄本総研エー・エス・ピー マネジメントシステム事業部 ITコーディネータ
〒550-0013 大阪府大阪市西区新町1-6-3
Tel. 06-6534-4551(原稿受領 2003.2.12)
本稿では,情報システムの開発側の視点ではなく,利用者側の視点にたって,プロジェクトマネジメントを紹介する。まず,プロジェクトマネジメントの歴史,概要,プロジェクトの立ち上げから完了までの流れを解説する。そして,ITプロジェクトが陥りやすい失敗を,その原因と共に例示し,プロジェクトを成功に導くためにはどうすればよいかを考察する。
キーワード:PMI,PMBOK,P2M,要件定義,コミュニケーション,プロジェクトの成功体験
プロジェクトマネジャに求められるスキル
生田剛史*
*いくた たけし (株)本総研エー・エス・ピー マネジメント事業部
〒550-0013 大阪府大阪市西区新町1-6-3
Tel. 06-6534-4551(原稿受領 2003.2.24)
近年,プロジェクトマネジメントの関心が高まってきている。
情報システム構築プロジェクトにおいて,プロジェクトマネジャはどのようなスキルを必要とし,何を実行しなければならないのか?
本稿では,筆者が実際に情報システム構築プロジェクトのプロジェクトマネジャとして実行したことや考慮したことなどを,具体的な内容を交え論述する。
キーワード:プロジェクト計画,品質管理,進捗管理,コスト管理,リスク管理,チームビルディング
図書館システムの導入に関するプロジェクト管理
杉山 健*
*すぎやま けん アクセンチュア 官公庁本部
〒107-8672 東京都港区赤坂7-1-16
Tel. 03-3470-9241(原稿受領 2003.2.17)
プロジェクト管理を単なるシステム開発上の手法,技術であると考えていないであろうか。プロジェクト管理という言い方は正しくないかもしれない。本当に必要なのは「プログラム管理」である。今多くの組織で陥っている課題にスポットをあて,最新の考え方に従って「あるべき姿」を想像してみることで,プロジェクトを成功に導くためのヒントを見つけていただきたい。また,筆者の現職での経験をもとに,多くの読者には謎の深い開発ベンダー側の舞台裏についても紹介してみる。
キーワード:ジャーニー・マネジメント,プログラム管理,プロジェクト管理,組織価値創造活動,クロス・ファンクショナル・チーム,ベンダー管理
ファイザー製薬(株)における本社情報活動について ―新しい情報センターの立ち上げ―
藤井信栄*
*ふじい のぶえ ファイザー製薬(株)KMリソース部
〒163-0461 東京都新宿区西新宿2-1-1 新宿三井ビル内私書箱226号
Tel. 03-3344-4384(原稿受領 2003.3.13)
ファイザー製薬(株),2000年7月に本社情報センター:Tokyo Medical Information Center(以下 TMIC)を設立した。その後TMICは「Non-traditional Library」「More User Friendly」「Information Exchange Place」をコンセプトにフロアリニューアル,サービスの充実を計り,本社ユーザーに対しKnowledge Support Centerとしての役割を担ってきている。本稿では設立までの経緯からその後の活動を述べ,役割を担ってきたかについて紹介する。
キーワード:情報センター,情報サービス
学術情報センター実現への道程
大呂美生*
*おおろ みお 名古屋女子大学学術情報センター
〒467-8610 愛知県名古屋市瑞穂区汐路町3-40
Tel. 052-852-9768(原稿受領 2003.2.28)
近年,情報通信技術の急速な発達により,社会全体は電子化へと進み,従来には無い新たな発想の様々な取組みが行われるようになった。この社会情勢の中で,高等教育機関としての大学は,いかに社会の要請に応えられる人材を育成するかが問われ,変革が求められている。名古屋女子大学では,この社会的な要請に対応するため,平成14年度より図書館と情報科学センターを統合し,学術情報センターを設置した。ここでは,設置準備委員会及びワーキンググループによる統合までの1年間の活動と,学術情報センターの組織及びサービス内容と今後の構想を紹介する。
キーワード:大学,大学図書館,組織統合,情報基盤,教育のマルチメディア化
利用者向け研修プロジェクト―企画と実施例―
慈道佐代子*
*じどう さよこ 京都大学附属図書館
〒606-8501 京都府京都市左京区吉田本町
Tel. 075-753-2626(原稿受領 2003.1.29)
「利用者研修」の目的は,図書館や図書館資料のより一層の利用促進を図ることにある。一方,図書館職員にとっては,この取り組みを通して自らの仕事を見直し変えていくことにある。しかし,企画し実施していくためには図書館職員の協力が必要で,図書館職員内部での理解を得ることが最も大切なことであり,また難しいことでもある。ここに京都大学で実施した3つの事例を紹介する。2つは現在も継続して実施されている。同様な企画を計画をしているところがあれば,実施へのはずみになればと思う。
キーワード:利用者研修,情報リテラシー,図書館活用法,文献収集講座,図書館職員
連載:第8回 脱!システム便利屋さん宣言(3)
(原稿受領 2003.3.5)
今回の話の中心は,なんとWebアプリケーション。聞き慣れないシステム用語とお思いでしょうが,実はみなさんの周りにも数多く存在し,日常的に利用しているものが多くあります。図書館や情報センターでも,Webアプリケーションを利用すれば,大変利便性の高い,ユニークなサービスが実現できます。少し?な用語も飛び出しますが,代表的なサービス方法やその構築のヒントなどをご紹介致します。