情報の科学と技術
Vol. 52
 (2002) ,No.8
特集=学術・情報分野のためのXML基礎


特集「学術・情報分野のためのXML基礎」の編集にあたって
(会誌編集委員会特集担当委員 小陳左和子,上村順一,峯尾幸信,山本和雄)

XMLが正式に誕生して4年以上が過ぎました。書店には関連図書が数多く並び,専門誌の発刊を始めとして各種雑誌でも頻繁に記事が掲載されるなど,私たちがXMLに関する知識を得る機会は増えています。しかし,XMLはどうやら内容や構造を示すタグがついたものらしいということはわかっていても,実際,どのようなメリットがあり何ができるのか,図書館などではどのように使えば効果的なのか,まだよくわからないという方も少なくないのではないかと思います。
 XMLがこれだけ話題になり,今後もますます普及していくであろう勢いがあるのはなぜでしょうか。
 XMLは,他のタグ付き形式データ(例えば図書館の世界では,書誌情報の標準形式としてMARCフォーマットが昔から有名ですが)とは何が違うのでしょうか。
 XMLではどのような表現が可能なのでしょうか。また,それによってどのような展開が可能なのでしょうか。
 XMLは,今後私たちの業務・研究にどのような関わり方をし,どのような影響をもたらすのでしょうか。
 XMLは日々拡張を続けており,限られた誌面では到底語り尽くせるものではありませんが,私たちに関係のある分野での活用事例も含めて,入門編となるような一冊を目指してみました。本特集がXMLへの理解を深めるための第一歩となれば幸いです。

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XMLの意義と最新動向
浦本直彦*
*うらもと なおひこ 日本IBM鞄結條礎研究所および国立情報学研究所
 〒242-8502 神奈川県大和市下鶴間1623-14
 Tel. 046-215-4564(原稿受領 2002.5.22)

 Extensible Markup Language(XML)は,文書およびデータ記述に広く用いられているマークアップ言語である。1998年にWeb技術の標準化団体であるWorld Wide Web Consortium(W3C)によって標準化され,ビジネスアプリケーション間で交換される情報の記述言語として,様々な形式の文書およびデータの構造記述言語として広く使われている。本稿では,XMLの生まれた背景,XMLが果たしてきた意義,そして最新動向について概説する。

キーワード:XML,半構造化文書,メタデータ,RDF,Semantic Web,Webサービス

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XMLの基礎
村上泰介*
*むらかみ たいすけ 鞄本ユニテック 企画部
〒105-0001 東京都港区虎ノ門1-23-7虎ノ門23森ビル4F
Tel. 03-3595-8241(原稿受領 2002.5.22)

 本稿ではXMLの基礎として,まずXMLの構造やその記述の仕方について述べる。XMLはタグを使用して,XMLデータの記述内容を要素や属性によって表現する。XMLはSGMLという規格から,Webでの使用,処理パフォーマンスの向上,整形式や名前空間への対応といった点で改善が計られている。XMLは汎用的なデータ記述言語であるとはいえ,その記述内容を規定するスキーマの存在が必要である。スキーマを記述するためのスキーマ言語として,DTDとXML Schema の2つを取り上げ,両者の特徴及び比較した結果について述べる。

キーワード:XML,タグ,スキーマ,名前空間,DTD,XML Schema

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実用ベースでみる,XMLの関連規格と考察
井下田 久幸*
*いげた ひさゆき インフォテリア 製品技術部
〒140-0014 東京都品川区大井1-47-1 NTビル10F
Tel. 03-5718-1660(原稿受領 2002.5.28)

 XMLと並んで有望かつ実用的な規格にXSLTがある。XSLTは,企業間におけるデータ交換において,微妙に異なる語彙やデータ構造の違いを吸収することができる変換の機能を有している。しかし実際のユーザーの環境では,さらに柔軟な変換機能や,より高速な変換を必要とする局面もあり,必ずしもXSLTが全ての解決策とはなっていない。XMLの利点と短所をよく理解して活用していくことが重要である。
 またXMLの本質は,人間を介在せずシステム間で直接データ交換を行うことにある。そのためXMLをプログラムで操作できるためのインターフェイスも,XMLを実用的に利用する上で重要なポイントになっている。

キーワード:XML,XSLT,DOM,B to B,B2B,Webサービス,標準化,規格,企業間,データ変換

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XMLの応用規格
内藤 求*
*ないとう もとむ 潟Vナジー・インキュベート リサーチ&ディベロップメント
〒151-0063 東京都渋谷区富ヶ谷1-30-22 折田ビル2F
Tel. 03-5478-9901(原稿受領 2002.5.21)

 数多くあるXMLの応用規格のうち,メタデータ関連の規格であるTopic Mapsに焦点をあてて,その解説を試みる。Topic Mapsは,ISOの標準であり,情報資源とは独立した上位層(メタレイア)で,情報を意味的に組織化,検索,ナビゲートするための新しいパラダイムである。Topic MapsおよびRDFに代表されるメタデータは,次世代のWebの世界で重要な役割を担うことが期待されている。メタデータをはじめXMLの特徴を活かした多様な規格により,有益な情報の共有/流通/伝承,ジャストインタイムでの情報の取得,情報のパーソナライゼーション,知識創造の支援が進むものと期待される。

キーワード:XML,XMLの応用規格,メタデータ,Topic Maps,RDF,Semantic Web

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医療情報学連合大会におけるXMLを用いた論文処理システム
作佐部 太 也*
*さくさべ たかや 浜松医科大学 大学院医学研究課博士課程
〒431-3192 静岡県浜松市半田山1丁目20番1号
Tel. 053-435-2770(原稿受領 2002.5.22)

 医療情報学連合大会では2000年開催の第20回大会より,XMLによる論文原稿の投稿と処理を実施している。執筆者はXML形式で原稿を執筆し電子的に投稿する。大会事務局では受領したXML形式の原稿を電子的に処理し,冊子体の論文集とCD-ROM版の論文集の二つの形態で出版する。この一連の処理を行うため,二つのソフトウェアが開発された。ひとつのソフトウエアは執筆者に配布され,XMLの検証やプレビューの機能を提供する。もうひとつのソフトウェアは電子組版の機能を提供し,印刷用のPostscriptデータとブラウズ用のHTMLデータを生成する。これらのソフトウェアは,複数のプラットホームで動作させることを考慮しJava言語でプログラムされた。

キーワード:学術集会,論文集,電子組版,XML,TeX,Postscript,PDF,Java

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農林水産研究情報センターでのデータベース構築におけるXMLの活用
鴻巣勝美*
*こうのす かつみ 農林水産省農林水産研究情報センター
〒305-8601 茨城県つくば市観音台2-1-9
Tel. 0298-38-7373(原稿受領 2002.5.9)

 農林水産研究情報センターは農学の専門図書館であり,独自の図書資料管理システムの運用,書誌の収集及び貸し出し,インターネット上で文献情報等のデータベースを提供している。文献情報にはAGRIS,JASI等があり,XMLを利用して書誌情報を作成しデータベースを構築している。また,XSLを利用したXMLの動的表示を用いて農学文献記事索引を提供している。画像情報等においてはDublin Core Metadata Element Setを利用してXMLファイルを作成している。連携機関でもあるFAOにおいても多様な情報をXMLにて構築を行っており,今後データベースの統合検索を推し進めていく予定でいる。

キーワード:専門図書館,情報センター,文献情報,AGRIS,JASI,XML,書誌情報,XSL,記事索引,画像情報,Dublin Core Metadata Element Set,DCMES,FAO

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