(株)日本著作出版権管理システム(JCLS)に対する文献複写権問題質問/回答書 |
1. 日本複写権センター(JRRC)・学術著作権協会・日本著作出版権管理システム(JCLS)の統合、一本化について
質問@
3機関が錯綜している現状を打開しょうとする考えはありますか。その際、まとめる機関はどこが妥当と考えますか。
回答@
JRRC | 現在3機関が存在しますことは、それぞれの必然性に基づき存在しているものと考えられます。しかしながら権利集中処理機関が単一であることが望ましいということには異論はありません。 |
学著協 | 現状の打開は必要です。まとめる機関としては当然日本複写権センターが妥当と考えますが、それを実現するためには、多様な著作権者の要請に対応できるようセンター運営の基本方針の見直しと事務局機能の強化が必要です。 |
JCLS | 3機関の統合は必要であり、それはJRRCが中心となって行うべきことと考えます。但し、そのためには、JRRCが、学著協とJCLSがそれぞれ独立して権利処理をせざるを得なくなった状況を理解し、2円の均一単価ではない、全く新しい課金基準と課金システムを考えることが必要です。 |
質問A
3機関の一本化が直ちにできない場合は、少なくとも窓口を一本化(包括契約時の調査窓口、委託著作物リストの一本化など)して貰いたいが、これについてどう考えますか。
回答A
JRRC | ご提言頂きました事項はいずれも3機関の検討、協議により共通の認識が必要であると考えられますので、ご提言を踏まえて慎重に対応させて頂きます。 |
学著協 | 実態調査窓口の一本化は望ましいと考えています。学著協が今後利用者にお願いする調査年間許諾(AAS)方式がある程度進んだ状況になれば、合理的な調査方法について他機関と話し合うことができると思います。 |
JCLS | 現状でJRRCの理解がないところでは難しいと考えます。学著協と弊社の間では当面許諾システムの一本化は出来ませんが、お互いの事務委託によって窓口の統合は可能かも知れません。 |
質問B
利用者、権利者、ドキュメントサプライヤーの代表者が同じテーブルについて、価格、処理システムを協議していくことが重要だと考えますが、どう思いますか。
回答B
JRRC | ご提言頂きました事項はいずれも3機関の検討、協議により共通の認識が必要であると考えられますので、ご提言を踏まえて慎重に対応させて頂きます。 |
学著協 | 複写権センターの中でも白抜きR、CCCを巡って多くの論議がされましたが、なかなかまとまらずに、3様の動きになりました。これは権利者側でも所属する団体の性格によって利害関係が大きく異なることによるものです。権利者とその著作物の利用者がある範囲にある場合には、関係する三者が価格(あるいは価格体系)やシステムの改善について協議することは有益でしょう。しかし、権利者はあくまで権利者としての意思を持っていますので、協議はそのシステムを技術的により円滑に機能させるためのものに重点が置かれるでしょう。 |
JCLS | 3者協議は重要と考えますが、利用者側に著作権法、特に複写にかかる権利は著作権者に帰属していること、ならびに著作権者には基本的に拒否権があることを理解して頂くことが前提です。それがなされないと権利者と利用者間の協議は不毛の論議になってしまいます。なお、それぞれの代表者を誰とするのか、その定義と選定が難しいのではないかとういうことを危惧します。 |
質問C
31条の解釈を始めとして、統一見解を含めた利用規程を作成する予定はありますか。その際、利用者と協議する意志はありますか。
回答C
JRRC | ご提言頂きました事項はいずれも3機関の検討、協議により共通の認識が必要であると考えられますので、ご提言を踏まえて慎重に対応させて頂きます。 |
学著協 | 31条をめぐっては、権利者として言うべきことは非常に多くあります。31条が制定された当時と現在では、複写機性能、産業構造、図書館の数とその利用形態等の情勢や、著作権者の意識等に大きな違いがあり、31条は現状にそぐわない面が出てきていると考えています。この点について「文化審議会著作権分科会情報小委員会」で検討が続けられています。学著協は、文化庁に設置された著作権者と図書館側の意見交換の場において主張すべきことを反映しています。図書館側も利用者の意見を充分に反映していると思います。今年度中にある方向性が出ることを期待しています。 |
JCLS | そのような見解あるいはガイドラインの作成は重要であると思います。現在文化庁の文化審議会著作権分科会において検討中ですので、その結論を待っているところです。 |
2.双務協定について
質問@
諸外国との双務協定については、IFRROに加盟しているJRRCが行うべきと考えますが、JRRCは今後の展望についてどう考えていますか。
回答@
JRRC | 諸外国との双務協定はご提言のとおり、当センターがIFRROの会員として外国RROとの双務契約を締結することが妥当であると考えます。複写実態調査等の結果をみて我国で需要のある外国文献の管理団体との契約から推進したいと考えます。 |
学著協 | 同感です。しかし、複写権センターの提示した双務協定の内容がCCCに受け入れられなかったので、次の機会には恐らく現在のセンターの価格体系の変更を含む位の提案が必要だと考えています。 |
JCLS | 諸外国との双務協定は必要であり、その双務協定はJRRCが締結すべきですが、そのためにはJRRCが2円の許諾単価を大幅に改定する必要があります。また、そのためには利用者の意識も変えて頂かなくては実行不可能です。 |
3.著作権の範囲について
質問@
貴機関が取り扱う著作権の範囲を示して貰いたい(公衆送信権や電子化を含むか、その場合はどこまでの範囲か)。
回答@
JRRC | 当センターが現在管理委託を受けている権利は、出版物の紙面からの複写複製又は其の複写物の複製からの複写複製、複写に伴う複写物の公衆への譲渡、及び出版物の紙面又は其の複写物のファクシミリによる送信に係る権利で複写等に係る権利であり、複写等に係る権利又は其の権利を行使する権限であります。 |
学著協 | 著作権の範囲には、国内著作物、CCC管理著作物ともに、著作物または著作物の複製物の紙・フィルム等への複写複製、複写物の公衆への譲渡、著作物または著作物の複製物のファクシミリによる送信、複写目的の電子化とその利用 が含まれます。インターネット関連の利用については、問い合わせは非常に多いですが、難しい問題もあるので、対象に入れていません。複写権センターとの関係においては、学著協が単独では行えない利用(例えば簡易方式包括許諾)については複写権センターに権利を再委託しますが、独自に許諾ができる場合には学著協の事業として行っています(例えば頒布を伴う複写利用許諾)。 |
JCLS | 複写ならびにファックス送信の権利です。 |
質問A
日本ではILLでのFAX送信は認められていないが、海外ではArielのような機能が整備されています。ILLに対する国内と海外の考え方の「ねじれ」をどう考えますか。
回答A
JRRC | ILLについては権利者の意向に基づく対応を図りたいと考えます。 |
学著協 | ILLについては、実体が遥かに先行しているところがあり、権利者は危機感をもっています。対策は急を要しますが、具体的な論議はこれからです。権利者の意向を尊重して参りたいと思います。 |
JCLS | 権利処理することを前提にFAX送信も可能にしたいと考えています。ちなみに現在文化審議会著作権分科会では商業目的を除く図書館における複写物の提供手段にFAX送信を加える検討が行われています。 |
4.薬事法について
質問@
製薬企業が薬事法に基づいて行う文献提供をフェアユーズもしくはアカデミックユースの類と見なすことについてどう考えますか。
回答@
JRRC | 著作権法に定める著作権の制限以外の利用は違法と考えます。換言すれば薬事法に基づく複写利用は著作権法における制限規程には該当しないと考えます。 |
学著協 | これらについては、利用者に複写の許諾を与える時に区別することになりますが、薬事法によるものは国内著作物については区別しています。現在は例が少なく個々に対応していますが、早い機会に然るべき団体とガイドラインを検討できればと考えています。CCC管理著作物については同様に扱う計画ですが、さらに実態を把握する必要があります。フェアユーズとアカデミックユースは定義を含めて論議が不十分で、CCCの複写許諾を進める中で利用者とも協議したいと考えています。 |
JCLS | 薬事法に基づく複写であったとしても製薬企業が行う以上は自社の製品に関する情報であり、アカデミックユースではないと判断しております。 |
5.白抜きRについて
質問@
白抜きRが管理物に占める割合はどれくらいですか。
回答@
現在の弊社の管理著作物中、JRRCにおける旧白抜きRは約70%程であろうと思われます。一方、JRRCにおける旧白抜きRのほぼ全部は弊社の管理著作物として既に登録済みと思われます。 |
6.包括契約について
質問@
包括契約の調査方法、業種設定を示して貰いたい。また、使用料の計算式(ex
従業員×20×2円)があればそれも示して貰いたい。
回答@
包括契約における業種分類は未定です。包括契約における当初の使用料計算方法は、管理著作物の分野別平均値に分野別の複写予想枚数を乗じたものを自己申告して頂くことを考えています。 |
7.出版コストについて
質問@
JCLSは出版コストの平等な負担を求めると言っていますが、出版コストの回収は年間購読契約で行われるべきだと思います。どうでしょうか。
回答@
出版物の複写利用が年間購読量と比較して少量であり、かつ複写利用者と購読利用者が同一人である場合にはご指摘の論理は成立しますが、複写利用がこれだけ膨大となった現状ではその方式はすでに取り得ないことは明らかです。 |
質問A
複写料と年間購読料の関係をどう考えていますか。年間購読料から算出した医書出版協会の雑誌論文は1頁17円以下という調査結果を得ています。
回答A
複写使用料は各委託出版社が決定するものであり、弊社はその権限を持っておりません。しかし学術専門書としての一般論から言えば、雑誌は1冊を単位として購入頂くことを前提としており、現在の医学系専門雑誌1冊あたりの平均価格は2,000円程度と思われます。一方複写は文献単位で利用するものであり、出版物のページ単価程度の金額価格を適用すれば、複写利用が合法化されたものとなった段階では雑誌そのものの利用は急激に落ち込み、雑誌の発行は不可能になってしまいます。 |
質問B
STM系の学術論文の流通は、研究水準の維持・発展に重要な役割を果たしています。また、研究者は互いの研究成果を相互に参照しあって研究を進めており、論文に代表される研究成果は学界の共有物であるといえます。したがって、著作権管理事業者は権利者の保護と併せて学位論文の流通を促進する条件も整備すべきだと考えますが、いかがでしょうか。
回答B
ご指摘の点は当然であり、異論はありません。複写を含めた学術論文が幅広く流通し、できるだけ多くの研究者の先生方に提供され、利用されることが学術水準の発展に寄与するものであることと考えます。このことについても弊社は使用料の決定権限を持っておりませんが、流通を促進させる条件が即、無料あるいは低額で複写を提供することにはならないと考えます。STM系の学術論文が掲載された専門誌はもともと研究者の先生方にご購読頂くことを目的として出版されたものであり、当然ですが、それはこれまでにも全て有料でお買い上げ頂いております。専門誌出版社の多くは、発行物の複写利用がそれぞれの出版物利用の一形態であると位置づけており、先生方に複写物をご利用頂く場合も基本的には有料であるべきと考えています。学術研究にもコストがかかり、実験機材も、薬品も、電気代も全て有料です。研究成果の伝達だけ無料あるいは低額というのはフェアではありません。 |
8.金額について
質問@
JCLSの価格設定は米国より安価とされていますが、現行の2円とは大きく乖離しています。緩やかに段階的に課金していくというような考えはないのでしょうか。
回答@
JRRCの2円はそもそも一般書において設定された価格であり、弊社の管理著作物の殆どは過去も現在もこの価格で委託しておりません。最終的には各委託出版社の判断となります。 |
質問A
複写利用料金と購読料金を切り離すのであれば、論文単位の商品を用意すべきとも思いますが、どう考えますか。
回答A
質問項目7.のAでお答えしております。雑誌別刷も雑誌売上の低下が予想されます。 |
質問B
米国と日本では研究者に対する予算配分も著作権に関する法的・制度的環境も異なりますが、これを無視して金額だけグローバルにするのは日本の研究体制に危機的状況をもたらす、といわざるを得ません。日本の文化的土壌に根ざした独自の権利処理制度を創る必要があると思いますが、どう考えますか。
回答B
米国と日本で研究者に対する予算配分がどう違うか、また著作権に対する法的・制度的環境がどう違うのかご説明下さい。あまりに日本的な解決を図ると、海外出版物の複写に支障を来たすことになるでしょう。 |
9.契約対象者について
質問@
ドキュメントサプライヤーおよび製薬企業から著作権料を徴収しようとしているようですが、病院図書室でのコピー(医師、薬剤師等の利用に対して)等に対して、今後どのように進めていくつもりですか。本来は同時スタートとすべきではないでしょうか。また、他の業種に対してはどのように進めていくつもりですか。
回答@
現在国内で年間2000万件以上の複写が行われている現状では全ての複写現場を一斉に管理することは不可能です。企業、あるいは医療施設内の複写、その他については順次進めて参ります。 |
質問A
企業を優先ターゲットにするとしても、JCLSの見解によれば研究者も31条の私的利用に該当しないとのことですが、彼らに対する啓蒙はどのように考えていますか。
回答A
弊社の管理著作物への掲載、研究施設への文書の送付、その他の啓蒙活動を行って参ります。なお、私的利用は30条に規定されております。 |
質問B
商業目的で31条図書館を利用した場合の支払い原則を明確にするべきではないでしょうか。
回答B
現在文化審議会著作権分科会で法改正に向けた検討を行っております。 |
質問C
管理事業のために設立されたJCLSですが、制度が整った場合はいつでも会社を解散させるつもりである、との説明ですが、具体的にはどのような環境なり、条件なりをJCLS解散の条件として考えているのでしょうか。
回答C
JRRCに弊社の業務を代行できる環境が整ったときに弊社業務はJRRCに移管し株主ならびに委託出版社の了解を得て、弊社は解散致します。 |
以 上