2015. 03 特集= 第11回情報プロフェッショナルシンポジウム

特集 : 「第11回情報プロフェッショナルシンポジウム」の編集にあたって

2014年も,盛大にINFOPRO2014が開催されました。まずもって,このシンポジウムにかかわる企画・発表・運営・その他のさまざまなお仕事にかかわられた皆様に厚くお礼申し上げます。私がこの催しの実行委員長を拝命してから実に6回目のシンポジウムです。この間,「特別講演+トーク&トーク+一般発表+プロダクトレビュー+情報交流会」という形式を,身をもって確立することができたと思っています。この形は,前任の細野委員長,土谷副委員長,田村事務局長が中心になって構築してこられたもので,私は,それを踏襲して発展させていただいたにすぎません。
この形の「INFOPRO・・・・」は,以下のような特徴を持っていると思います。
1.一般発表によって,インフォプロの皆さんの個々の研究や実務経験の発表の場を確保している。
2.その時々の話題の演者による特別講演を聴くことによって,参加者が大いなる刺激を受ける。
3.「トーク & トーク」によって,パネリストとフロアが入り乱れて,情報や情報専門家の問題について討論する。
4.ベンダーの方々のPRの場として,展示とともに一定の時間枠を保証する「プロダクトレビュー」を設ける。
5.発表者,参加者,展示提供者が一緒になって,参加する「情報交流会」を初日の夜に開催する。(とくに,最近では,特別講演の演者が参加してくださり,大変盛り上がりました。)
この形は,学術的な側面,お祭り的側面,実務家のための情報提供と親睦の側面のすべてが,見事に融合した形式だと思います。この形式で,おおむね成功裡にシンポジウムが開催できたのは,徳野,林両副委員長をはじめとする実行委員各位や事務局の皆様の,多大なご努力の賜物だと思っています。
ただ,「月満つれば欠く」との言葉もあるように,もしかしたら,伝統を重んじるとともに,新たな形式も検討してゆくべきかもしれません。今後の本シンポジウムの一層の発展を期待しています。
(INFOPRO2014実行委員会委員長 山﨑久道)

第11回情報プロフェッショナルシンポジウム

(INFOPRO2014)開催報告
INFOPRO2014は,(独)科学技術振興機構との共催により,2014年12月4日~5日の2日間,日本科学未来館(東京都千代田区)において開催された。
約300名の参加者を迎え,特別講演,トーク&トーク及び一般発表等,今回も充実した内容となった。
また,今回も情報関連企業・機関の協力を得て,プロダクト・レビュー(プレゼンテーションと出展)を開催した。参加各社のプレゼンテーションをプロダクト・レビューとしてプログラムに加え,更に,展示コーナーでの商品展示を行うなど,いつも通りの内容で好評を博した。
●特別講演
講師:丸山 宏 氏(統計数理研究所 副所長 教授)
演題:ITは学術のあり方をいかに変えるか
●トーク&トーク
テーマ:特許価値評価の現状と課題
●一般発表  31件
情報分析1~3,特許1~2,学術情報,情報の連携・比較,情報技術の習得と実装,分類・用語などの分野についてのセッションで発表された。
●プロダクト・レビュー
4社によるプレゼンテーションと展示コーナーでの商品説明などを行った。
本特集号では,特別講演,トーク&トークについては,参加者された方にお願いして聴講記事として執筆していただきました。
一般発表については,各発表の概要を掲載しました。予稿集の全文は,科学技術振興機構(JST)のJ-STAGEからご覧いただけます。

特別講演「ITは学術のあり方をいかに変えるか」を聴講して

古賀 めぐみ
こが めぐみ 株式会社サンメディア
〒164-0012 東京都中野区本町3-10-3 PORT 91
Tel. 03-5371-8541        (原稿受領 2015.1.13)

一 般 発 表 概 要

トーク&トーク 「特許価値評価の現状と課題」を聴講して

清水 美都子
しみず みつこ 一般財団法人日本特許情報機構
〒135-0016 東京都江東区東陽4-1-7 佐藤ダイヤビルディング
Tel: 03-3615-5511        (原稿受領 2015.1.15)
開催趣旨1);
企業や研究機関の活動に関して,これらの組織が有する知的財産権について,注目され,重要視されてきていますが,その過程で,知的財産の価値をどのように計り,どう評価するかについてもいろいろな議論や検討がなされてきました。しかしながら,その知的財産の中でも,技術の要である,特許の価値評価については,指標およびその手法について,まだ議論の余地があるようにも思われます。今回のトーク&トークでは,知的財産の価値評価,あるいは知的財産とイノベーションの関係に関して,それぞれのお立場で,研究・検討されてきた先生方に現状をご紹介いただき,その後,会場の多くの知的財産関係者との質疑・議論を通じて,特許価値評価の現状の認識を深め,また残されている課題等について,考えていきたいと考えています。

話題提供者1):
・石井 康之氏(東京理科大学大学院 イノベーション研究科 教授)
経営的視点からみた特許と技術について,経済統計学の立場で,かつ,出願(登録)件数のような量的側面でない,出願を個々の技術としての指標で評価する方法について研究。
・大津山秀樹氏(イノベーチュア(株)代表取締役社長,ニューヨーク州弁護士)
メーカー,シンクタンクを経て,現SBIホールディング傘下のインテクストラ(株)代表取締役として,技術・ノウハウ・ブランド等,知的創造活動の成果を活用した経営・事業戦略等に関与。
・鈴木  潤氏(政策研究大学院大学 政策研究科 教授)
メーカー研究員を経て,特許データを用いた分析により,企業の研究開発やイノベーションと特許との関わり,企業の技術戦略,あるいはイノベーション政策の実証分析について研究。
・長岡 貞男氏(一橋大学 イノベーション研究センター 教授)
通産省,世界銀行エコノミストを経て,イノベーションと知的財産権(制度)をメインに,研究開発の生産性と収益性など,多くの観点から,知的財産に関わる一連の研究を精力的に継続。
・コーディネーター 徳野  肇氏
実行委員会副委員長 株式会社三菱化学テクノリサーチ(特許調査部長)

技術視点から導く新規事業領域推定手法の検討
-「研究-事業」および投資力の指標化-

3i研究会 Aグループ
伏見 祥子1),伊賀上 まみ子2),大津 督3),岡 紀子4),木下 敏夫5),中井 将人6),佐藤 和代7)
1)ふしみ さちこ 昭和産業株式会社
2)いがうえ まみこ 東レ株式会社
3)おおつ ただし 日産化学工業株式会社
4)おか のりこ OKA情報技術コンサルテーション
5)きのした としお 株式会社日立技術情報サービス
6)なかい まさと 中央光学出版株式会社
7)さとう かずよ アサヒグループホールディングス株式会社
〒272-0026 千葉県市川市東大和田2-4-10
Tel. 082-830-1540        (原稿受領 2015.1.15)
研究開発を行う組織においては,自組織の保有するコア技術を基に,事業を拡張するための提案を求められる場面が多くなっている。本研究においては,絆創膏メーカーが自社のコア技術を基に,事業を拡張することを検討する場合を例に,分析手法の検討を行った。具体的には,傷を早く治すコア素材に,親和性の高い疾患をMeSHから抽出し,抽出された疾患に対する特許情報,文献情報および推計患者数から「研究-事業化」の進捗及び市場の投資力分析することを検討した。
キーワード:3i研究会,新規事業,事業戦略,コア技術,異分野参入,医療分野,MeSH,文献情報,特許情報,患者数,投資力分析,分析手法

自社の技術の棚卸しによる新規事業提案の手法検討

3i研究会 Bグループ
本田 瑞穂1),清水 剛2),清水 理恵子3),永山 敦,屋ヶ田 和彦4)
山田 裕明5),山田 宏文6),山根 深一7)
1)ほんだ みずほ 株式会社カネカテクノリサーチ
2)しみず たけし TOTO株式会社
3)しみずりえこ 株式会社日本電気特許技術情報センター
4)ながやま あつし,やがた かずひこ 住ベリサーチ株式会社
5)やまだ ひろあき ランドンIP合同会社
6)やまだ ひろふみ 東洋インキSCホールディングス株式会社
7)やまね しんいち 東レ株式会社
〒530-8288 大阪市北区中之島2-3-18
Tel. 06-6226-4320        (原稿受領 2015.1.15)
新規事業の立ち上げのアプローチとして,自社の技術を組み合わせようとすることはよくあるが,実際にやろうとすると,自社に多様な技術があるにもかかわらず,その全容はつかみきれていないことが多い。本報告では,シーズからのアプローチの試みとして,自社の技術の棚卸しを行うことにより,自社技術の強み・弱みを分析し,新たな事業の提案を行うための手法を,事例を用いて検討した。(1)自社技術のコア技術の抽出の手法,(2)コア技術と他の技術の組み合わせの手法,を中心に報告する。
キーワード:特許のたな卸し,コア技術,テキストマイニング,特許評価値,概念検索,新規事業

将来の新事業展開のために連携すべき研究者を発掘・評価・選定する手法

3i研究会 Cグループ
大久保 武利*1,沖田 香織*2,小泉 真理*3,櫻井 英之助*4,佐山 暁子*5
塚原 徹也*6,野口 尚志*7,野田口 真也*8,柳 一美*9
*1おおくぼ たけとし キヤノン株式会社 総合R&D本部 ナノ材料・分析技術開発センター
〒146-8501 東京都大田区下丸子3-30-2
Tel. 03-3758-2111(代)
*2おきた かおり 神奈川県立川崎図書館
*3こいずみ まり 筑波大学大学院
*4さくらい えいのすけ (株)日清製粉グループ本社
*5さやま さとこ 東邦大学
*6つかはら てつや 中央光学出版(株)
*7のぐち たかし 旭化成(株)
*8のだぐち しんや 独立行政法人科学技術振興機構
*9やなぎ かずみ (株)日立製作所
(原稿受領 2015.1.15)
近年,新事業の創出や新技術の開発などを目的に産学連携が盛んに行われるようになった。しかし,適切な連携相手(研究者)を見つける方法がわからず産学連携に踏み出せないケースも依然として多い。このような背景を受け,産学連携に向けて適切な連携相手となる研究者を発掘・評価・選定する方法について検討した。研究者の発掘手法としては,連携候補となる研究者リストの作成方法を検討した。研究者の評価・選定手法としては,公開情報から研究者を客観的に評価するためのスコア付け方法(評価パラメーターと評価式の作成)を検討した。また,この評価手法を実際の産学連携の成功事例に当てはめてその有用性を検証した。
キーワード:産学連携,事業展開,研究者,客観的評価,情報検索,情報解析,3i研究会,公開情報,特許情報,文献情報

企業における異分野融合の成功事例のプロセス解析

3i研究会 Dグループ
山中 とも子*1,浅野 昭*2,伊藤 祥*3,関口 卓宏*4,角田 裕之*5,原田 雅子*6,水野 千夏*7
*1やまなか ともこ 株式会社ファンケル
*2あさの あきら
*3いとう さち 独立行政法人科学技術振興機構
*4せきぐち たかひろ 株式会社クラレ
*5つのだ ひろゆき 鶴見大学
*6はらだ まさこ 旭化成株式会社
*7みずの ちなつ 住友電工デバイス・イノベーション株式会社
〒244-0806 神奈川県横浜市戸塚区上品濃12-13
Tel. 045-820-3976        (原稿受領 2015.1.15)
繊維メーカーが新事業開拓に取り組み,異分野である医療分野へ進出した事例に着目し,異分野進出プロセスと事業戦略を情報解析により解き明かした。解析には特許,文献,市場情報,新聞等の多様な情報源を使用し,パテントマップを用いた特許解析,文献の共著ネットワークによる共同研究者分析,特許価値インデックスを利用した特許評価等の各種解析手法を試みた。
解析結果より研究開発戦略,知財戦略等を明らかにし,新事業開拓から事業拡大までステップごとに設定した仮説をもとに,異分野融合の成功パターンを検証し,成功要因を推定した。
キーワード:異分野融合,医工連携,特許解析,共著ネットワーク,特許価値インデックス

プロダクト・レビューに参加して

INFOPRO2014では,今回も,情報関連企業によるプロダクト・レビューを開催しました。
プロダクト・レビューは,一般発表セッションの中で発表していただき,多くの聴講者を向かえることができました。また,展示コーナーでも,各社の出展ブースを設け,多くの来訪者を迎えることができました。
以下に,プロダクト・レビュー各社からの出展の感想を掲載します。

概念検索の使いこなしに関する論文

六車 正道
むぐるま まさみち 六車技術士事務所
〒316-0032 茨城県日立市西成沢町4-37-6
Tel. 050-8012-2416,または0294-37-1284
(原稿受領 2014.11.29)
概念検索の使いこなしに関する論文はすでに30編近く発行されている一方で,概念検索は再現率が低く実務には使えないという意見もある。本稿でこれらの各論文の概略を紹介した。これらを見ると,検索実験には実験のテーマ数が数十件など大量に実施されたものと少ないものがある。テーマ数が多い場合,質問文は請求範囲などが使われている。テーマ数が少ない場合,質問文は意志を反映させて利用者が作った短文を使い,ヒット判定に使う目標特許群は綿密な調査をして設定しているものが多い。これらにより,なぜ概念検索の利用で再現率が高いものと低いものがあるのか推察される。
キーワード:概念検索,特許調査,情報検索,データベース,キーワード分布,出現頻度

次号予告

2015.4 特集=「古典籍資料の最前線」
(特集名およびタイトルは仮題)

  • 総論:古典籍資料の現在
  • 各論1:国文学研究資料館・日本語の歴史的典籍データベースの構築について
  • 各論2:宮内庁書陵部における古典籍資料
  • 各論3:古典籍資料の文字読解ツールについて
  • 各論4:立命館大学アートリサーチセンターにおけるARCモデルについて

など