2014. 8 特集=ファンドレイジング活動

特集 : 「ファンドレイジング活動」の編集にあたって

今月は「ファンドレイジング活動」いうテーマでおおくりいたします。近年に入り,公的財源の抑制が強く求められるところとなり,公的機関に連なる情報センター・図書館等においても,運営経費の別途の手当が必要となるケースが出てきています。そういったケースに対応する一つの手立てとして注目を集めているのは,一般の方から何らかの寄付を募ることにより,資料費や設備費,事業費を補うファンドレイジング活動です。NPO法人や公益法人等の事業体による情報提供活動においても,目的に応じた寄付をどのように集め,安定した運営を実施するかは大きな課題となっています。東日本大震災後の被災地等での復旧復興過程でも,十分な財源確保ができない場合には,寄付によりその財源を充当した事例も見られました。公益社団法人シャンティ国際ボランティア会による陸前高田市支援(700万円超),名取市図書館(120万円超)などがあげられると思います。東松島市図書館や南三陸町図書館のようにAmazon社の「ほしいものリスト」を公開して,市民からの現物寄贈を募るといったことも見られました。広く資金を集めるためのウェブサイトとして「ソーシャルファンディング」(またはクラウドファンディング)といったサービスが提供され始め,今後の文化活動,社会貢献活動の発展を担う可能性があります。日本においては以前から欧米に比較して「ファンド」が弱いとの指摘もされています。そこで今号では日本のファンドの実情,米国の状況などを取り上げました。
総論として山内直人氏に,「ファンドレイジングとはなにか」というテーマで,NPOの収入構造や日本の寄付市場,欧米の寄付市場,ファンドレイジングのプロセス,ファンドレイジングに関わる人材の育成などについて広く論じていただきました。鎌倉幸子氏には,シャンティ国際ボランティア会で実践されているファンドレイジング活動について日頃から留意している点やドナーピラミッドをもとにした活動,ファンドレイジングの黄金律など活動を行っていく上で大切なことを実践面から論じていただきました。岡本真氏からは,現在注目を集めているクラウドファンディングの最前線について,READYFOR?の運営を経験されたお立場から論じていただき,クラウドファンディンの将来についても言及いただきました。磯谷奈緒子氏からは,クラウドファンディングサービスを実際にREADYFOR?で行った事例を照会していただきました。グッド長橋氏,グッド和代氏,小泉公乃氏にはファンドレイジング活動が盛んな米国の事例について,述べていただきました。
本特集がファンドレイジング活動を考える上でのみなさまの参考になることを願ってやみません。
(会誌編集担当委員:小山信弥(主査),立石亜紀子,鳴島弘樹,長谷川敦史)

ファンドレイジングとは何か

山内 直人
やまうち なおと 大阪大学大学院国際公共政策研究科
〒560-0043 豊中市待兼山町1-31 大阪大学国際公共政策研究科
Tel. 06-6850-5621        (原稿受領 2014.6.23)
日本の寄付市場は米英には比較してまだ小さいが,今後拡大することが期待される。NPOが寄付収入を増加させるためには,目標設定,潜在的寄付者のリストアップ,寄付の依頼,スチュワードシップといったファンドレイジング・プロセスに従って,効果的に行う必要がある。マッチングギフト,コーズ・リレーテッド・マーケティング,クラウドファンディングなど新しい手法もファンドレイジングに取り入れていく必要がある。ファンドレイジングの効率性,費用対効果にも留意する必要がある。専門的知識を持ったファンドレイザーの養成も必要で,大学など高等教育機関の役割も大きい。
キーワード:ファンドレイジング,ファンドレイザー,ファンドレイジング・プロセス,クラウドファンディング,スチュワードシップ,コーズ・リレーテッド・マーケティング,マッチングギフト

ファンドレイジングは,フレンド(友達)レイジング
 ~ドナーピラミッドを活用した施策とファンドレイザーの役割

鎌倉 幸子
かまくら さちこ 公益社団法人シャンティ国際ボランティア会
〒160-0015 東京都新宿区大京町31 慈母会館2階
Tel. 03-6457-4585        (原稿受領 2014.5.29)
ファンドレイジングは資金調達をするだけではなく,支援者と受益者とをつなぎフレンドレイジングをする貴重なツールとなる。その間にいる架け橋がファンドレイザーの役割だと考える。
ファンドレイジングは闇雲に実施しては非効率である。シャンティ国際ボランティア会は,限られた時間や人材というリソースの中で,効率的に管理,運営するためにドナーピラミッドを活用している。団体を知らない人たちに認知してもらうことが最初の一歩となる。支援者の負担が少ないメールマガジンの登録から,イベント参加,物品の寄贈,単発寄付,マンスリーサポーターのような継続寄付,大口寄付とドナーピラミッドの底辺から頂点までステップアップしていくためのプログラムを紹介する。
キーワード:ファンドレイジング,資金調達,ドナーピラミッド,シャンティ国際ボランティア会,募金,クラウドファンディング

クラウドファンディングの最前線-READYFOR?の運営経験を通して

岡本 真
おかもと まこと オーマ株式会社,アカデミック・リソース・ガイド株式会社
〒231-0012 神奈川県横浜市中区相生町3-61 さくらWORKS<関内>408
Tel. 070-5467-7032        (原稿受領 2014.6.16)
インターネットを利用した新しい資金調達の仕組みであるクラウドファンディングの動向について,代表的サービスの一つであるREADYFOR?の運営経験に基づいて解説する。特に日本におけるクラウドファンディングの仕組みやREADYFOR?における事例に基づく資金調達に成功する秘訣を説く。
キーワード:クラウドファンディング,資金調達,READYFOR?,ファンドレイジング

~島根県隠岐島の海士町中央図書館にみんなで本を贈ろう!~
 あま図書館応援プロジェクトの取り組み

磯谷 奈緒子
いそたに なおこ 海士町中央図書館
〒684-0403 島根県隠岐郡海士町大字海士1490
Tel. 08514-2-1221         (原稿受領 2014.6.9)
島を挙げ読書推進に取り組む隠岐島の海士町で,海士町中央図書館の蔵書充実を目的に,有志による「あま図書館応援プロジェクト」が発足した。クラウドファンディングで全国に支援を募る新たな取り組みの実際について,有志メンバーとしても活動に携わっている図書館職員より海士の図書館活動全般も含め報告を行う。
キーワード:図書館,クラウドファンディング

米国の図書館におけるファンドレイジング活動

グッド長橋 広行*1,グッド 和代*1,小泉 公乃*2
*1ぐっど・ながはし・ひろゆき(hng2@pitt.edu),ぐっど・かずよ(kak93@pitt.edu) ピッツバーグ大学図書館
3142 Ellers Street, Pittsburgh, PA, 15213 USA
*2こいずみ まさのり(mkoizumi@pitt.edu) ピッツバーグ大学情報学研究科客員研究員
135 North Bellefield Avenue, Information Sciences Building (Room 605B), Pittsburgh, PA 15260 USA
  (原稿受領 2014.6.3)
本稿の目的は,米国の大学・公共図書館におけるファンドレイジング活動を明らかにすることである。まず卓越した大学図書館と公共図書館におけるファンドレイジング活動の概要を,グッド広行・和代が複数の事例をもとに記述した。次に図書館長らのインタビューをもとに,ピッツバーグ・カーネギー図書館の業務プロセスを小泉公乃が明らかにした。これらのことから,米国の図書館におけるファンドレイジング活動は,1)成功を収めたファンドレイジングの手法が多岐に渡り,2)担当は主に専門家と図書館員から構成され,3)資金は主として新しい試みに投資される傾向にあり,4)経営戦略と不可分なものであることがわかった。
キーワード:ファンドレイジング,米国大学図書館,米国公共図書館,寄付,マッチング・ギフト,基金,資金調達,図書館経営,イノベーション

Google Scholarから読み取る日本語利用統計データと分野別科学研究費の比較

宮川 良男*1,本間 通正*2,狩野 延枝*2
*1みやかわ よしお,*2ほんま みちまさ,かのう のぶえ *1東京理科大学学術情報システム部,*2葛飾図書館事務室
〒125-8585 東京都葛飾区新宿6-3-1
Tel. 03-5876-1541        (原稿受領 2014.5.22)
近年Google Scholarの発展は目覚ましく,有料の学術情報検索データベースが有する様々な機能を付加するようになった。和文誌も英文誌も多く所蔵するGoogle Scholarに着目し,その統計情報から日本語出版物のアクセス頻度の高い資料100件を科学研究費の分野に沿って分類し比較を行った。結果は情報・電気電子工学系,環境・自然災害・エネルギー科学系以外は科学研究費の採択件数及び配分額の割合と整合するデータが得られ,無料データべースであるGoogle Scholarの利用統計は,ほぼ社会的動向に沿った結果を表していた。
キーワード:Google Scholar,科学研究費,学術情報データベース,統計情報,Citation

次号予告

2014. 9 特集=「震災記録のアーカイブ」
(特集名およびタイトルは仮題)

  • 総 論:震災記録のアーカイブ
  • 各論1:国立国会図書館東日本大震災アーカイブ(ひなぎく)の現状
  • 各論2:日本原子力研究開発機構図書館における福島第一原子力事故関連情報アーカイブ化への道のり
  • 各論3:地域コミュニティによる震災アーカイブ
  • 各論4:東日本大震災の資料収集から公開:東松島市図書館の事例
  • 各論5:日本赤十字における原子力災害情報センターデジタルアーカイブへの取り組み
  • 各論6:新潟中越大震災に関する記録の収集と活用
  • 各論7:震災記録のアーカイブの運用
  • 各論8:歴史的・アーカイブズの観点から見た震災アーカイブ

など