「CCCを巡る文献複写権問題に関する説明・検討会」を開催 |
1.これまでの経緯 1)2000年2月に学術著作権協会(以下「学著協」)は、企業に対して米国の著作権集中管理団体CCCの管理著作物84万件の日本での複写に関して、「個別許諾契約」を締結してコピー1枚に対して50円を支払わなければならないという文書を送付した。 企業側は、その多くが国内文献の複写に関して「包括許諾契約」を交わしている唯一の著作権集中管理機構である(社)日本複写権センター(以下「JRRC」)以外の機関からのこうした要請に戸惑い、また仮に契約をしても企業内部のあらゆる部門が複写のたびに個々に申告するというこの個別契約方式は、実行不能であると反発した。 この問題は米国機関が絡む国際契約の側面を持つため、企業内でもその取り扱いに苦慮するところとなり、協会の多くの会員企業から協会で対処するよう強い要請があった。このため協会では、理事会をはじめ各委員会でこの問題への対処を検討し、2000年11月に学著協との契約を保留するよう文書で勧奨するところとなった。2001年3月には問題解決の糸口を得るために、会員170社に対しアンケートを行い43社から回答を得た。 2)一方、2000年10月の「著作権等管理事業法」制定によって、著作権管理事業に民間企業が届出のみで容易に参入できるようになり、さっそく2001年1月には、株式会社日本著作出版権管理システム(以下「JCLS」)が設立された。また、JRRCは同年2月にCCCと日本との間で「包括許諾契約」が実施できるよう再交渉を開始したため、学著協はこの交渉の結果を待っている状況となっている。この交渉がまとまれば、学著協との個別許諾契約は必要なくなるからである。 2.説明・検討会の開催 協会では、複写権問題に本格的に対処するために、2001年4月に「複写権問題検討会」(委員長三浦前副会長)を発足させ、文化庁・経団連・学著協などと意見交換を行ってきた。こうした経過の中で、関係機関から現状の説明を聞き、この問題についてディスカッションする機会を持つこととなり、さる7月25日(木)13:00−16:20に文京シビックセンターで標記会合が行われることになった。当日は、アンケート回答者を中心とした29機関32名と文化庁、JRRC、JCLSの各責任者が参加して行われた。関係機関の参加者と説明内容は以下であった。 * 文化庁著作権課マルチメディア著作権室長尾崎史郎氏「著作権等管理事業法について」 * (社)日本複写権センター事務局長山下邦夫氏「CCCとの契約交渉について」 * (株)日本著作出版権管理システム社長金原優氏「JCLS設立の趣旨とその業務」 3.説明・検討会の結果 1)説明・検討会に先立ち協会からアンケート結果の報告がなされた。アンケートの主な内容は以下のとおり。 * 回答者(企業)の81%がJRRCと国内文献複写に関し包括許諾契約を締結している。 * 77%がCCCとの契約についても包括許諾契約方式が望まれると回答。 * 国内・海外を問わずJRRCが双方を合わせた包括契約をすべきである。 * 包括許諾契約を国内・海外一本化で行う場合、1ページ当たり5円以下が望ましいとの回答が47%、10円までおよびそれ以上が妥当が53%であった。 2)ディスカッションに入る前に文化庁尾崎氏からは、2001年10月1日に施行される「新事業法」の内容について詳しい説明があり、JRRCの山下氏からはCCCとの契約交渉状況、JCLS金原氏からはJRRCの契約が及ばないいわゆる「白抜きR」と呼れていた、医学を含む科学技術系文献の著作権管理業務の開始予定についての説明があった。3氏の発言のポイントは以下のようなものであった。 * 平成14年4月1日以降、管理事業者は、「原則として法人が文化庁に届け出て登録をしなければならない」。 * JRRCも指定管理業者とは決められない。 * 管理事業者は、料金設定については利用者代表の意見を聞き、料金体系については公開しなければならない。 * 管理事業法が施行されても、文献複写について何も変化は無いはずである。 * JRRCはCCCと契約交渉中であるが、交渉がまとまるか否かは予断を許さない。いつ結果が出るかの明確な予想は立たない。交渉のベースとなっているのは1ページ2円。 * JCLSの著作権管理物の指値は平均1ページ50円程度になっている。 * JCLSはElsevierなどの海外のSTM(Science,Tecnology and Medicine)系出版社からの参加申し入れを受けている。 4.今後の対応 文化庁の見解では、JRRCの包括許諾契約に関する利用者代表とは例えば経団連であ るとのことであった。協会「検討会」としては、この見解は現実的ではないとの判 断から、今後は専図協、薬図協などと連携してINFOSTAのような情報関連機関が実 態どおり利用者代表であるとの立場を表明するとともに、文献複写権について英米 のように1機関が内外の全ての文献の著作権集中管理を行うべきであるとの提言を 行うなど、文献複写処理がスムーズに行われるよう対応していく予定である。 以上 文化庁webhttp://www.bunka.go.jp/ (社)日本複写権センターwebhttp://www.jrrc.or.jp/ (株)日本著作出版権管理システムwebhttp://www.jcls.co.jp/ |