Vol. 56 (2006), No.7
JISやISO (TC46),NISOなど情報活動に関する標準規格は,単に図書館システムにとって必要なだけではなく,今や将来的な図書館サービスの展望を見据える上で,重要な意味を持つようになってきています。MARC(厳密な意味での標準規格ではありませんが)のおかげで書誌レコードの相互運用が可能になり, Z39.50によってシステムに依存しない情報検索が可能となりました。そして最近ではISOの図書館パフォーマンス指標が話題になっています。
本誌では42巻5号(1992)において「情報流通のための標準化」として同様の特集を組みましたが,当時はインターネットも学術利用に限られており, Microsoft Windowsもまだ登場する前のことでした。十余年を経過した現在,情報を取り巻く環境は大きく様変わりしており,インターネットを基盤とした情報のボーダーレス化,資料の電子化が"秒進分歩"で進む中,情報検索の第一線に立つわれわれも新しい技術の情報収集に一層強く取り組まなければ,今後の情報検索の潮流から取り残されかねないものとなってきています。一方,新しい技術の情報収集といってもどうしたらよいか,雲をつかむような気持ちになることもあるのではないでしょうか。
そこで本特集では,今後の技術動向を知るための第一歩として改めて標準規格を取り上げることとし,それぞれの分野で活躍されている方々から論考を寄せていただきました。本特集によって標準規格の現在を知るとともに,その世界的な広がりを感じ,今後の新しいサービス活動を考えていく上での一助となれば幸いです。
(会誌編集特集号担当委員:木下和彦,大田原章雄,吉間仁子)
宮澤 彰*
*みやざわ あきら 国立情報学研究所
〒101-0003 東京都千代田区一ツ橋2-1-2
Tel. 03-4212-2508(原稿受領 2006.4.26)
情報標準の必要性と,ネットワーク情報化の時代でのその役割を,図書館等のサービス,システムの開発という点から述べる。それらの情報標準化を行っている日本および国際的な団体,JISC,ISO/TC46,NISO,IETFとW3C,DCMI,OAI,SISTについて紹介し,どのような標準を開発しているかを例示する。それらの標準化の枠組みが,グローバル化の時代で変化してきて,特に米国中心の枠組みを強めようとする傾向の見られることを指摘する。また,標準化の問題点として,わかりにくさ,巨大化,使われない標準,メンテナンスコストをあげる。最後に標準化への積極的な参加を呼びかける。
キーワード: 標準化,グローバル化,機関レポジトリ,メタサーチ,JIS,ISO/TC46
平山 亮*
*ひらやま まこと 金沢工業大学 情報フロンティア学部メディア情報学科/ライブラリーセンター
〒921-8501 石川県石川郡野々市町扇が丘7-1
Tel. 076-274-7108(原稿受領 2006.5.15)
ISO規格およびJIS規格として標準化されている情報検索プロトコルZ39.50,図書館相互貸借プロトコルILL,電子的文書交換プロトコル GEDIについて概観する。続いて,次世代の情報検索プロトコルとして米国議会図書館の標準化グループで検討が進むSRW,SRU,CQLについて解説する。また,SRWの拡張機能として策定されたXML化画像検索プロトコルについて解説する。書誌だけでなく,資料そのものも電子化して,インターネットを通じて世界中に公開されるワールドライブラリー時代において,プロトコル標準化の果たす役割が大きいことを論じる。
キーワード: 情報検索,標準化,JIS規格,Z39.50,ILL,SRW,SRU,CQL
伊藤 真理*
*いとう まり 愛知淑徳大学文学部図書館情報学科
〒480-1197 愛知県愛知郡長久手町長湫片平9番地
Tel. 0561-62-4111(原稿受領 2006.4.28)
情報が多様な形態や媒体で分散して流通するようになり,情報への効率的なアクセスおよび入手のために,標準化に則った書誌情報(メタデータ)の提供がさらに必要とされている。また,利用者の情報の利用方法の変化への対応も求められている。より適切なメタデータ作成のために,目録の概念レベルのモデリングの検討が必要となった。本稿では,主要な目録概念モデルであるIFLAのFRBR,FRBRに基づいて検討された目録原則やオンライン目録のあり方,および書誌記述フォーマットや情報資源識別子について概観し,それらの利用について考察する。
キーワード: 書誌記述,メタデータ,情報資源識別子,FRBR,ISBD,Dublin Core,XML
小谷 允志*
*こたに まさし 日本レコードマネジメント レコードマネジメント研究所 所長
〒101-0048 東京都千代田区神田司町2-2
Tel. 03-3258-8671(原稿受領 2006.5.11)
文書・記録に関する標準,規格等について国際的に重要度の高いものを拾い出し解説する。オーストラリアのAS4390から始め,今世界で最も影響力のある記録管理の国際標準ISO15489,その日本語版JISX0902,ISO15489をすべてのISO標準の記録管理部分に適用しようという ISO22310,さらには電子文書を紙文書と同等に扱うという考え方を初めて明確にした国連電子商取引モデル法,ヨーロッパの電子記録モデル要件 MoReq,米国のDoD5015.2,アーカイブ分野よりICAの電子記録ワークブック,画像の電子化プロセス規格では日本のJISZ6016,電子文書の長期保存ではISO19005を取り上げる。こうしてみると今,記録管理は世界的に「説明責任」と「電子化」という2大キーワードを中心に動いていることが読み取れる。
キーワード: 説明責任,電子化,記録管理のパラダイムシフト,記録のライフサイクル管理,真正性,信頼性,完全性,利用性,電子記録の長期保存
徳原 直子*
*とくはら なおこ 国立国会図書館
〒100-8924 東京都千代田区永田町1-10-1
Tel.03-3581-2331(原稿受領 2006.5.19)
図書館評価に関する国際規格には,図書館パフォーマンス指標(ISO11620,ISO/TR20983)と図書館統計(ISO2789)がある。それぞれの国際規格の特徴を示すとともに,最新動向について紹介する。具体的には,図書館パフォーマンス指標については,ISO11620第2版となる委員会原案(CD)の内容について説明する。CDは,従来型図書館サービスの指標(ISO11620)と電子図書館サービスの指標(ISO/TR20983)とを統合した規格となっている。図書館統計(ISO2789)については,2003年に大幅に改訂された第3版を中心に説明する。第3版では, ISO11620に必要な統計データが新たに規定されており,附属書Aにおいては電子図書館サービス利用統計についての考察が盛り込まれている。また,現在改定中のISO2789第4版の内容についても触れる。最後に,これらの規格の活用方法について概説する。
キーワード: 図書館評価,パフォーマンス指標,図書館統計,ISO11620,ISO/TR20983,ISO2789,JISX0812
樫村 雅章*
*かしむら まさあき 慶應義塾大学HUMIプロジェクト
〒108-8345 東京都港区三田2-15-45
Tel. 03-5427-1646(原稿受領 2006.5.11)
書物などの紙資料からデジタル画像を取得するための方法には,フィルムを用いる間接的な方法と,デジタルカメラなどを用いる直接的な方法があり,様々な方式の入力機器が役立てられている。貴重書デジタル化のための画像入力に関して2回にわたって解説を進めるが,まず今回は,フィルムスキャナやフラットベッドスキャナ,業務用の特殊な方式のデジタルカメラなど,主な入力機器について原理や特徴などを概説する。
キーワード: デジタル画像,デジタルカメラ,スキャナ,貴重書,デジタルアーカイブ,画像入力