情報の科学と技術
Vol. 52 (2001)  , No.8
特集=メタデータ Part-2 〜21世紀のメタデータの利用方法と可能性


特集「メタデータ Part-2〜21世紀のメタデータの利用方法と可能性」の編集にあたって
 (会誌編集委員会特集担当委員 :
               田邊 稔,松林正己,北島由紀子,山本和雄,吉澤麻美,村上勝美)

メタデータとは,「Information about information(情報に関する情報)」である。つまり,文献データ,画像データ,音声データ,空間データ等の一次資料を分類・管理するための二次資料用の定義体(スキーマ)なのである。我々,大学図書館や公共図書館,企業図書室といった情報サービスプロバイダーは,研究・教育支援や情報リテラシーの向上という目的のために,様々な情報を入手し,効率よく管理し,利用者に迅速に提供する必要がある。そのためには,種々雑多なジャンルの資料を共通の規格で管理することを考えなくてはならない。なぜなら,異種フォーマットの情報を同じように分類し,同じような構造のスキーマに格納することで共通インタフェースによる検索が可能になるからである。
  ダブリン・コア(Dublin Core)もそのようなスキーマの1つである。初期は,電子媒体(Web上)の情報検索のために制定されたが,現在では様々なメディアのメタデータを対象としており,異種フォーマットのデータ交換の架け橋となることが期待されている。また,図書館の目録データフォーマット(MARC)もメタデータの1つであり,ダブリン・コアは「Web版簡略MARC」とも言える。
  21世紀の図書館は,もはや図書や雑誌およびAV資料といった2次元的な情報だけでなく,美術館や博物館および各省庁や自治体といった3次元的な空間情報を所有する機関とも連携して,情報を横断的に提供&共有していかなくてはならない時代がやってきている。最近では,DRM(Digital Research Museum)やバーチャル図書館といったサイバー・ソサイエティ構想が計画されている。
  そういった点で,今回の特集では,様々な観点からメタデータを掘り下げ,その実現可能性を追究している。文献情報としては,OCLCのCORCプロジェクトの動向,空間情報では国土交通省のクリアリングハウス・ゲートウェイ,各メーカのリポジトリ関連製品の紹介,そしてデジタル放送におけるメタデータの応用と幅広く網羅されている。
  リソースシェアリング時代にあって,情報サービスプロフェッショナル(Info-Pro)を目指す我々としては,今後メタデータの活用は必至であり,避けて通れない問題である。今回の特集が,メタデータの扱い方を学び,活用する上で1つの指針となることを願って止まない。

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図書館界とメタデータ:米国議会図書館の戦略を中心に
村上泰子* 
 *むらかみ やすこ 梅花女子大学
  〒567-8578 大阪府茨木市宿久庄2-19-5
  Tel. 0726-43-6221(原稿受領 2001.6.5)

ウェッブ情報資源の激増を背景に様々なメタデータが提案されてきた。情報の生産者側で付与することを前提としたメタデータの登場により,ドキュメンテーションは図書館だけの関心事ではなくなった。ウェッブ情報資源の組織化ツールとして注目されているメタデータであるが,データの付与規則が整備されていない,安定性が確保されていない,など課題も多く,紙媒体資料の組織化を通じて長年培ってきた図書館界の経験やノウハウの重要度は減じていない。本稿では,現在のメタデータに関する取り組みを簡単に概観した後,米国議会図書館の戦略に注目し,図書館界が今後メタデータにどのように取り組むべきか考える手がかりを提供する。

キーワード:メタデータ,米国議会図書館,図書館目録,AACR2,LC21,WWW

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CORCプロジェクトに参加して
鹿島 みづき* 
*かしま みづき 愛知淑徳大学図書館
 〒480-1197 愛知県愛知郡長久手町長湫片平9
 Tel. 0561-62-4111, ex. 304(原稿受領 2001.4.24)

CORCとはOCLCで開発された共同メタデータ作成システムで,1999年1月から1年半をかけて行われた研究プロジェクトとして発足した。日本で唯一の参加館となった愛知淑徳大学図書館での取り組みを,カタロガーの視点から,システムの紹介並びに日本特有の問題点と課題について述べる。

キーワード:CORC,メタデータ,ダブリンコア

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国土地理院クリアリングハウス・ゲートウェイ (ISO 23950 gateway)
―ISO 23950を用いた空間情報クリアリングハウス・ノードの構築と日本語メタデータの処理―

河瀬和重*,久保紀重**,明野和彦*** 
*かわせ かずしげ 国土交通省国土地理院地理情報部
**くぼ のりしげ 国土交通省総合政策局国際建設課
***あけの かずひこ 国土交通省国土地理院地理情報部
  〒305-0811 茨城県つくば市北郷1番
  Tel. 0298-64-1111(内線7533)(原稿受領 2001.5.18)

地理情報についてのメタデータの整備及びクリアリングハウスの構築は,地理情報の相互利用を促進し,地理情報の重複投資を回避するために必要不可欠である。クリアリングハウスの構築を実現するためには,メタデータ標準の策定や,分散検索を行うためのシステム開発を行う必要がある。本稿では,国土地理院における地理情報メタデータの記述のための標準策定に関する取組,及び情報検索プロトコルの国際標準であるISO 23950のメタデータ検索システムへの応用について述べるとともに,こうした標準を基にして国土地理院で構築したクリアリングハウスについて紹介する。

キーワード:クリアリングハウス,メタデータ,ISO/TC 211,地理情報標準,ISO 23950,分散検索,日本語処理,形態素解析

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基盤技術としてのリポジトリ―必要な機能と最近の動向
行成 敦* 
*ゆきなり あつし 日本ユニシス梶@第一ソフトウェアサービスセンター システムサービス二室
 〒135-8560 東京都江東区豊洲1-1-1
 Tel. 03-5546-6840(原稿受領 2001.5.18)

リポジトリの概念は,古くから存在するが,投資効果的側面と技術的側面により,本格的に導入されている例は少ない。しかし,昨今インターネットを利用した企業間を結ぶシステムおよびデータウェアハウスにおけるメタデータ管理が重要視されている。技術的にも,ハードウェア基盤の進化およびソフトウェアの標準化により,実際に利用できる基盤も整ってきている。
  本稿では,メタデータを管理するリポジトリの機能を説明し,それに対応した最近の標準化動向について,OMG(Object Management Group)を中心として報告する。

キーワード:リポジトリ,メタデータ,標準化,情報モデル,オブジェクトマネジメントグループ

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地理情報システムにおけるメタデータ情報の実装と利用
―ArcInfo ver 8 日本語版の紹介

雨宮 有* 
*あめみや たもつ 潟pスコ ESRI本部 ESRI技術部
 〒153-0043 東京都目黒区東山1-1-2 東山ビル
 Tel. 03-3715-1601(原稿受領 2001.5.21)

地理情報システム(GIS)の分野では,インターネットを通じてデータを参照あるいはダウンロードして利用できる環境とソフトウェア機能が整備されつつあり,メタデータを地理情報データとともに流通させる重要性が認識されるようになった。データの内容,作成者,地理的な範囲,精度,作成年次,更新周期などデータ品質に関する情報や,データを公開または販売する場合の条件など,地理情報データに関するメタデータの標準化が進められている。
地理情報システムの代表的なソフトウェアであるArcInfoでは,地理情報データの加工処理やインターネット上でのデータ検索にメタデータ情報を利用する機能を備えるようになった。

キーワード:メタデータ,地理情報システム,GIS,ArcInfo,FGDC,CSDGM,XML,DTD,Geography Newtwork

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デジタル放送におけるメタデータ応用
権野善久* 
*ごんの よしひさ 且汾「代情報放送システム研究所
 〒111-0035 東京都台東区西浅草1-1-1
 Tel. 03-5826-7383
 ソニー潟Cンターネット研究所
 〒141-0001 東京都品川区北品川6-7-35
 Tel. 03-5448-6443(原稿受領 2001.5.21)

昨年末のBSデジタル放送のサービス開始に伴い,白黒からカラー,モノラル音声から多重音声,に続いて,久しぶりに大きな変革〜アナログからデジタル〜が押し寄せつつある。これまでの変化が,視覚や聴覚で感じることができたのに対して,今回の変化は一見直接人間の五感で感じることはできないようにも思われる。技術的には確かに過去最大の変化であるのだが,この変化により放送サービスのあり方がどのように変わるのであろうか?本稿では,ウェブにおけるメタデータ技術の普及を背景として,これが放送のデジタル化の中でどのような応用が期待されるの
か,そのために必要となる技術や解決すべき課題についてその概要を解説する。

キーワード:コンテンツ,メタデータ,ウェブ,電子番組案内,文字放送,字幕放送,タグ付き言語,国際標準

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