情報の科学と技術
Vol. 51 (2001)  , No.6
特集=図書館の統計と評価


特集「図書館の統計と評価」の編集にあたって
 (会誌編集委員会特集担当委員:吉澤麻美,重田有美,田邊 稔,岩澤一男,松林正己)

 図書館経営は教育機関,企業,自治体等様々な機関によってなされている。したがって各々の図書館が提供するサービスの目的は図書館を経営する親機関の使命に極めて緊密に連動している。
 学術研究情報を中心にサービスを提供する大学図書館や専門図書館は,利用者層の多少の違いはあるが,提供される学術情報水準は極めて類似しているのではなかろうか。よりよいサービスを提供するためには実績を踏まえた評価活動は必須条件である。大学図書館評価は,ここ10年の教育改革の過程で国立大学はすべて終了しているし,そのほかの大学でも進行しつつある。その一方で国立大学のエイジェンシー化に連動して,図書館関連予算に厳しい査定がなされる傾向にあるようだ。これは国立大学に限らず,いずれの企業や機関にしろ,日本社会が直面する問題の一部を直接反映している。
 このような背景を踏まえて図書館が自らの使命を遂行する経営の指標足りうる統計と評価の方法が確立される意義はまことに大きい。そこで本号では,従来の統計と評価を振り返りながら,より充実した経営を展開するために実施された新しい試みの幾つかを紹介し,国際的な視点を踏まえた統計と評価の動向をレビューしていただいた。これらの諸論攷が21世紀の図書館経営の戦略指針を模索する契機を提供できたならば,編集担当者一同の喜びである。

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総論:図書館の統計と評価
糸賀雅児* 
 *いとが まさる 慶應義塾大学文学部
  〒108-8345 東京都港区三田2-15-45
  Tel. 03-5427-1224(原稿受領 2001.4.24)

図書館統計には業務統計・調査統計および内部統計・外部統計の区別があり,図書館サービスの評価規準として量,質,費用,時間の4つが考えられる。これらを組み合わせて用い図書館を評価する際の枠組みとして,時間軸をも考慮した「図書館効果」のモデルを提示した。同様の視点から国際規格のパフォーマンス指標も4つに類型化され,調査統計の一種として活用できる。さらに図書館統計の国際規格の改訂作業も進められており,電子メディアを使ったサービスについて,新規の統計項目が検討されている。こうした国際的な動向も踏まえて,大学図書館は大学改革の一翼を担うためにも,今後第三者を交えた評価が求められる。

キーワード:図書館統計,図書館評価,図書館効果,図書館パフォーマンス指標,自己点検・評価

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経営指標としての業務統計を目指して
入江 伸* 
*いりえ しん 慶應義塾大学 メディアセンター本部
 〒108-8345 東京都港区三田2-15-45
 Tel. 03-5427-1649(原稿受領 2001.3.24)

統計データはそれを活用してこそ意味がある。活用しないデータのために大切な業務時間をさくことは無駄である。その業務統計を活用し,経営へ反映できる組織作りこそが重要である。そのためには,評価するビジネスモデルを明確にし,収入と支出をバランスして評価しなければならない。基準が組織によってばらつくことがないように明確にし,簡単で説得力がある数値としてまとめなければならない。評価を恐れずそれらの数値を公開することによって,図書館(大学)業界全体の信頼と成長を促すものとなる。
ここでは,慶應義塾大学メディアセンターでの統計ワーキンググループの活動を紹介し,経営指標としての業務統計の考え方を説明する。

キーワード:経営指標,収支バランス,標準統計,自己点検評価,文部省大学図書館実態調査,データベースと電子ジャーナル費用,図書館ビジネスモデル,経営支援システム,来館型モデルとeモデル

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千葉大学附属図書館の第三者評価について
本和雄* 
*やまもと かずお 千葉大学附属図書館
 〒263-8522 千葉県千葉市稲毛区弥生町1-33
 Tel. 043-290-2253(原稿受領 2001.4.24)

組織発展のためには,客観的な評価に基づく改善努力が欠かせない。自主的な運営を期待されるようになった大学ひいては大学図書館にも自己点検・評価さらには第三者による評価が求められるようになった。本稿は,国立大学図書館の中では最初に第三者評価を実施した千葉大学附属図書館の例について,周辺の状況等も併せて紹介する。

キーワード:図書館外部評価,大学改革

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専門図書館における評価活動
梅木 徹* 
*うめき とおる 住友金属工業椛麹技術研究所研究企画部
 〒660-0891 兵庫県尼崎市扶桑町1-8
 Tel. 06-6489-5953(原稿受領 2001.4.4)

長期不況下の予算・人員削減問題,そして,恒常的な資料購入費の高騰問題といった逆風の中で,多くの専門図書館が存続の危機に立たされております。こうした状況の中で専門図書館が生き残っていくためには,限られた経営資源を最大限に活用して,これまで以上に利用者ニーズを充足させる業務の再構築が必要であります。
そこで本稿では,まず,図書業務の改善ポイントを検討した上で,具体的な事例として「住友金属工業梶@総合技術研究所資料室における図書業務の評価・改善の試み」を紹介していきたいと思います。

キーワード:図書業務の評価,図書業務の改善

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学術図書館における新尺度開発の国際的な動向
杉山誠司* 
*すぎやま せいじ 日本福祉大学付属図書館,愛知淑徳大学大学院
 〒470-3295 愛知県知多郡美浜町奥田
 Tel. 0569-87-2325(原稿受領 2001.4.10)

図書館マネージメントに,新しい評価尺度が求められている。図書館評価において,入力値評価から成果物評価への転換が必要である。図書館評価尺度の改善は,欧米とりわけアメリカにおいて著しい。そのような中でARLは新尺度イニシアティブを始動させた。ARLの新尺度開発の状況をレポートする。新尺度イニシアティブは5つのプロジェクトで構成されている。それは,1) 大学レベルの成果物評価に使用可能な図書館活動の貢献度評価ツール 2)SERVQUAL測定手法を使用した図書館サービス品質測定のパイロットプロジェクト 3) 図書館のコスト運用研究 4) ILL/DDの自己評価支援ツールの開発 5) 電子情報源の尺度確定プロジェクトが含まれている。

キーワード:図書館サービス品質,パフォーマンス尺度,成果物評価,SERVQUAL,電子情報源,図書館間相互協力,費用研究

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図書館情報システムの評価方法
―Webサイトからみた図書館の評価―

平石広典*,光富健一**,山下輝雄***,溝口文雄**** 
*ひらいし ひろのり 東京理科大学情報メディアセンター
**みつとみ けんいち 東京理科大学図書館野田分館事務課係長
***やました てるお 東京理科大学図書館野田分館事務課課長
****みぞぐち ふみお 東京理科大学図書館野田分館長
  〒278-8510 千葉県野田市山崎2641
  Tel. 0471-24-1501(原稿受領 2001.4.12)

本稿では,図書館の情報システムの評価としてWebサイトの評価方法について述べる。Webサイトは,その組織がどれだけ多くの情報を持っており,どれだけのサービスを実施しているかを直接的に表すものである。特に情報システムの評価としては,図書館に導入されているシステムを見るのではなく,それらがどれだけ上手く運用されているかを評価することで,Webサイトが充実し,それがアクティブに利用されていることが第一条件となる。

キーワード:Webサイト,サービス,ビジュアライズ,自動評価システム,図書館情報システム

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