資料・情報の管理にあたる専門家にとっては,出版物は最も基本的な道具です。この道具を使いこなし,適切な情報をそれを求める人に提供するのが図書館・情報センターの基本的な任務でしょう。大雑把に言うと,この任務を適切に行うために,どのような工夫をすればよいのかを探求してきたのが,図書館学であり,ドキュメンテーション理論であり,その他情報学であると位置付けられます。
通常図書館・情報センターのサービスの中では,出版物は「与件」として,どの出版物を収集し,提供するかを分析して資料の構築を行います。そこでは,制約条件としての収集予算,人員規模,インフラストラクチャー(建物,ハードウェア,ネット設備など),法制度(著作権法や民法・商法上の扱いなど,また契約事項)などを踏まえて,任務を全うするのに最適な資料を取り揃えていくことが重要な企画となります。
さて,今回はその収集の裏にある構造,つまり出版を簡単に敷衍してみるために,特集を企画しました。出版という行為は,資料・情報の頒布であるために,それを受け取って情報サービスを行う者にとっては,必要なサービスの与件として,内実の検討は通常必要ありませんが,昨今,電子出版物の拡大に伴い,本来の「任務」との関連がなんとなく重要そうだと感じておられる方も増えていると思われます。
「出版と情報」という問題を情報部門担当者の目から捨象すると,電子出版に代表される出版環境の変化そのものと,その変化による情報担当部門への影響が大きな関心事ではないでしょうか。現在,出版物によって図られる情報の流通と保存が,新しい時代ではどのように変化していくのか,探求するのは大変に意義あることと考えます。
今後の出版事業はどう変わるのか,その中で情報担当部門はどのような新しい道具を手中にできるのか,ということに焦点を当てて編集しています。読者諸賢の参考になれば幸いです。
|